僕の八ヶ岳話 77


タラノメ・・・たらの芽・・・それは僕も知ってる山菜だった
ただ、僕が知ってたのは八百屋やスーパーの野菜売り場で、パックに詰められたなんか緑色であまり存在感もない「菜っ葉」みたいなものだった 食べても特にどうってことは無い味・・・まあ不味くはないけど美味しいとも別に思えない代物だった

しかし、そのとき僕が目にしたのはそれとは全く別物だった まず大きさがまるで違う スーパーなどで僕が知ってたたらの芽はせいぜい5センチくらい・・・しかし、今目の前に見えるのはどう見ても15センチ以上はあって堂々と穂先を拡げている 色もなんだか菜の花みたいな淡い緑ではなくちょっと紫かかった濃い緑色だし・・・とにかくスーパーのパックにはとても入りきらない大きさだった

しかもそれが出ているところはそのひょろ長い幹の一番上・・・地上から由に3mくらいはあるのだ! それをどうやって採るのだろう? するとNさんはいつの間にか用意したのか、軍手を取り出し両手にはめた そしてトゲだらけの幹をそうっと掴みながら徐々にその位置を上げて行く・・・そうしながら斜面を上の方へ移動する するとその樹は徐々に竹のようにしなり・・・終いにはついにNさんの手の届くところまで来た そしてその穂先を彼は片手を使ってポキっと折り採る 樹はその反動でぐいーんと反り返りもとの直立状態になった
Nさんの手の中には掌よりはるかに大きい木の芽が握られていた それがタラノメ・・・天然のタラノメを僕は初めて見た 今までのスーパーの”あれ”とは別物の強靭な存在感があった

その獲物を持ってきたスーパーの袋に無造作に入れるとNさんはあたりをきょろきょろと見回して・・・「あ、そこにもある!」 その場所から10mほど先を見てそう言った しかし、僕にはそう言われてもまったくわからない 彼は走るように急斜面を駆け下りるとその場所に移動・・・僕もなんとか足元をすくわれそうになりながら藪をかき分けその後に続く 今度はさっきよりさらに太くて高いタラノキの樹がそこにあった・・・

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