富士屋のおばちゃん

「今週末で店締めることにしたのよ~」

「えっ!」 思わず絶句するマスター亜郎 電話の相手は”ふじやのおばちゃん”

今ペンギンハウスにお酒を入れてくれている酒屋さんのうちの1軒だ

ショックを受けて慌てるマスター、ショックは僕もだ いきなり電話してきて「今週で」だもんなあ

「富士屋酒店」とうちの付き合いはとても長かった ペンギンハウスを始める前「猫屋敷」のオープンからだから、もう40年近い付き合いだったのだ

当時は僕もマスターも20代なかば おばちゃんはその当時から「おばちゃん」だったから今ではかなりの高齢だ

当時は「おじちゃん」と呼んでいたご主人と一緒に店を切り盛りしていた この”おじちゃん” あの世代の人にしてはかなり背丈があって顔はちょっと”黒澤明”に似ていてなかなかいい男だった

ただ、根っからの”遊び人”で店の売り上げを持ち出してはしょっちゅう競馬や競艇に出かける・・・と、当時おばちゃんからよく愚痴を聞かされたものだ

おじちゃんもおばちゃんも”ちゃきちゃき”の江戸っ子 どちらかというと無口で無愛想なおじちゃんと正反対でお喋りで愛想がよくっておまけに男勝りで人情家、「江戸の女」を絵に描いたような人だ

若い頃は浅草あたりでけっこう青春を楽しんでいたそうでダンスホールに行ったりコンサートを観に行ったりと色々な思い出話をしてくれた

そういえばこんな会話を覚えてる

「おばちゃん、”サッチモ”のコンサート観に行った事あるんだって?」

「”さっちも”なんてあたしゃ知らないよ あたしが観たのはルイ・アームストロング!」

そんなおばちゃんだったが、おじちゃんに先立たれその後は跡継ぎもいなかったので一人で細々とお店を続けてきた それがついに・・・

「どうして急にやめることにしたの?」に 答えは 「あたしもボケがきちゃったんだよ」と冗談交じりに 確かに最近おばちゃんは頼んだ注文を間違えたり、ちょくちょく忘れることもあったけど・・・

まだまだ口調はしっかりしてるし、残念だなあ・・・

でもおばちゃん お疲れ様でした これからはゆっくり老後を楽しみながらたまには「若造」の話し相手になってね

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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