僕の八ヶ岳話 37

8月もお盆を過ぎると八ヶ岳は急に涼しくなった 家の周りの原っぱにはいつの間にかススキの穂が出始めた そして8月が終わると途端にあれほどの賑わいがまるで夢だったのではないかと思うくらい清里の街も急に静かになった

もう馬鹿馬鹿しいほどの車の大渋滞も、ハイヒールにボディコンスーツでソフトクリームを舐めながら歩いていたギャルたちも姿を消した それでも週末にはそこそこの人がやってくる 今では考えられないくらい清里には大勢の人々がやってきていた

その頃からだ 日本中があの「バブル景気」に突入して、その余波はこの山の中の小さな街にも押し寄せてきた まず土地の値段が信じられないくらいに上がりはじめた ちょっと前まで一坪ン千円だった土地に何十万とう値段が付き、それに合わせるように土地ブローカーたちが街を暗躍しはじめた 何しろひと夏で一千万単位の売り上げを稼ぐ店が何軒もあって、それに目をつけたのがメジャーで稼いでいたタレントたちだった まず「ビートたけし」がカレー屋を開いた 続いて「山田邦子」「田代マサシ」「梅宮辰夫」など蒼々たる有名人が次々と店をオープンした

「清里で商売すれば当たる!」そういう噂が多くの人たちの人生を変えてしまった それまで細々と農業や酪農で生活していた人たちが銀行から多額の融資を受けて次々と商売を始めたり、あるいは先祖から受け継いできた土地を手放し多額の金を手に入れたり・・・ 地元のガソリンスタンドに山梨ナンバーの高級外車で乗りつける人があちこちで見られた

バブル崩壊が来るまで、その夢が終わることはないと誰でもが思ってたに違いない

今の清里にはその悪夢の名残がまだあちこちに残っている

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