僕の八ヶ岳話 72

ピーク時のスキー場はそれこそ信じられないくらいに混み合っていた 施設内の駐車場はかなり広くしてあったが、それでも車が入りきれない カントリークラブの敷地入り口には入場制限のゲートが設けられ、そこから長い車の行列がずうっと続く ピーク時にはスキー場からなんと中央道の「須玉インター」まで渋滞がつながった

その混雑に目ざとい地元の農家や酪農家が目をつけた 自分の持つ敷地を臨時の駐車場(もちろん有料で)をにして、溢れたスキー客の車を受け入れた 当時はスキー場に続く農道をスキーウェアを着てスキー板を担いだ人々がぞろぞろ歩くというとてもシュールな光景が見られたものだ

そういうことを避けるために前日の夜に現地入りをするお客も多かった だから僕の勤めていたロッジは土日はもう満室でキャンセル待ちがその何倍もあるという状況になった チェックインの時間には特に制限は無かったので、かなり遅くにやってくる宿泊客も多かったが・・・

ある夜のこと、ほとんどの宿泊客がチェックインを済ませてその日は残り1組だけとなっていた チェックインが済めば僕らフロントマンも少し仮眠が取れる ところが、その夜は最後の予約客がなかなか到着しない 時刻はすでに深夜0時を回っていた どうしたのだろう?ドタキャンか?それとも事故にでも遭ったのか?・・・深夜の道路は凍結してスリップ事故が起きてもおかしくない状況だった

するとその予約客からようやく電話がかかってきた
「もしもし、予約した○○です」
これはキャンセルか?・・・そう思ったが相手はこう告げてきた
「すみません、もうインターを降りてそちらに向かってるのですが、雪が積もってて車にチェーンを巻いてるのですが、初めてなのでなかなか上手く出来なくて」

現在地を訊いてみた すると国道141号線の「小手指(こてさし)坂」の途中だという それを聞いて僕らはため息をついた「小手指坂」は須玉インターからこちらに向かう最初の難所だ それまでほとんどフラットだった道がいきなりかなりの急勾配になる わかってるドライバーなら確実にその手前でチェーンを巻く ところが、その人は坂道をノーマルタイヤで登り始めて途中で進めなくなってそこでやっとチェーンを巻くことにしたのだそうだ

これは最悪の事態だった

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