高校野球といえば (前)

今ちょうど甲子園の高校野球の真っ最中だね 今年は台風などで開会式が2日遅れて今日がベスト8を決める三回戦 明日から準々決勝がはじまるみたいだ それにしても青森(八戸学院光星)と沖縄(沖縄尚学)がベスト8に残ってる 今年は面白くなりそうだね

以前、僕はとくに高校野球には興味があまり無かったんだが、あることをきっかけにすごく好きになってしまったのだ その話は以前僕の個人的ブログにも書いたのだけど、けっこう「いい話」だと思うのでまた書いてみますね

ヤツ

今から10年ほど前、ちょうど吉祥寺のからまつ亭を閉店して八ヶ岳に戻った僕はむこうで新たな仕事についた

それは地元にある私立高校の学生食堂の調理師という仕事 昼間は全校生徒の昼食を提供して、夜はその高校の寮にいる生徒たちに食事を提供するというのが僕の持ち場だった

その高校はいわゆる「スポーツ校」で、とくに野球とサッカーは全国大会などにも何度も山梨県代表として出場している強豪校だった

僕はその「野球部」の子供たちの食事を作っていたのだ

スポーツ校の選手の子たちの毎日はそれはタイヘンだ 朝は早くに起きてグランドに行き早朝練打撃習 それから普通の授業に出る 放課後はまたグランドに行って夜遅くまで練習

それこそ汗と泥まみれになって戻ってくると、それも練習の一部なのだが飯をとにかく大量に食いまくる 大きな丼で大盛りで2杯は食べる 食べて丈夫な身体を作る・・・それも彼らにとっては大事な使命なのだ 入ってきたばかりの新入生のなかには食の細い子もいどんぶりた するとそれをみつけた先輩がその子の丼にこれでもかという勢いでご飯を押し込んで「これ全部食うまでは寮に戻るな!」と意地悪なことを言う こういうことは運動部の中では今でもまかり通っているのだが先輩の言うことは絶対だ 独り食堂に残って泣きながらその巨大な飯を食べ続ける新入生に僕は「いいから」と言ってこっそりご飯を減らしてやったりしていた

その年、野球部は「今年こそ甲子園に出る!」という意気込みで猛練習に明け暮れていた 今ピッチャー年・・・というのはその年、九州からやってきていた3年生のエースピッチャーのHくん・・・かなりの剛速球投手ですでにプロのスカウトからもマークされているというくらいの実力だった 「今年は行けるかも」そういう期待が選手たちにもコーチ監督たちにも選手の親たちにも学校全体にも膨らんでいた

夏が近付くにつれ練習はさらに激しさを増していった 夜10時くらいまでグランドの照明が消えるナイターことはなかった だからそれから戻って食事をするのがもう11時近く この頃は僕が仕事を終えて家に帰るともう日付が変わっている・・・そういう日が続いた

選手たちは日に日にその表情が変わってゆく 真っ黒に日焼けして痩せてそして眼だけが獣のよ豹うにギラギラしている 食事中でも彼らの発する「殺気」がすごかった ちょっとしたことで言い合いや喧嘩そして下級生いじめが発生した あの高校野球でよく問題になるようなことがその高校でも普通に行われていた

エースのHは人なつこくてお調子もので選手たちの間でも人気があった そのHがなぜか僕にはよく懐いていた「おっちゃん、今日もまだ仕事かあ」「おっちゃん、オレにもうちょっとおかずくれよ~」「おっちゃん、もっと美味いもの食わせろ」・・・とか、とにかく減らず口が多いのだがなぜか憎めない子だった その彼がある日こう言った

「おっちゃん、明日は俺たち準決勝なんだ おっちゃんも応援に来てよ」

もちろん言われなくても行くつもりだった 明日の相手は県内でもトップクラスの強豪校、甲子園の常連だった ただ今年こちらにはHがいる・・・これは期待できるかも

まあ、試合にはそれほど興味はなかったんだけどずうっと面倒をみていた子供たちの戦う姿も一度は見ておこうか・・・そんな気持ちで翌日、僕は地区大会の開かれる野球場へと向かった

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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