僕らの北沢話  12

とりあえずどこかに入ろうか・・・ということになって僕らはある一軒のファーストフード店に入った

全員がこれでもかと言わんばかりに肩で風切って思いきり悪そうな表情を作りながら・・・

異様な風体のそれもかなりの人数の一段がどやどやと店に入っていったので店内はまたたくまにMD-umeda_0001「フリーズ」していた そこはたしかフランチャイズのドーナツショップだった

お 客はカウンターでほしいものを注文しセルフサービスで自分の席まで持っていくというあのスタイルだ ところが、その店で増田は凄んだ 「おら、ここまで 持って来いよ」席に座り店員に顎で自分の場所を示す 「いえ、当店ではそういうサービスは・・・」という言葉を呑みこんだか、従業員は黙ってコーヒーと ドーナツの乗ったトレイを席まで運んできた その手がかすかに震えていた

僕らは「フフフフ」と笑いたいのを噛み殺しながら一生懸命ツッパリのポーズを保っていた 真面目に真剣にツッパッていたのだ

そこでしばらく「ツッパリング」を堪能して僕らは外に出た

「今度はどうする、どこに行こうか?」「そうだねえ・・・」

するとAがとんでもないことを言い出した

「ねえ、新宿行こうよ 歌舞伎町のあたり」チョウカブキ

いや、それはまずいんじゃないの・・・あそこはそれこそ”本物”がうようよ居るから・・・という皆の忠告に対し彼はこう言い放った

「だからこそそういうところへ行かなきゃツッパッてる意味ないじゃんか!」

Aにはもはやこれが「遊びだ」という認識はなくなっていたようだ(笑) さすがにその提案は却下され、そろそろ夜も更けてきたので僕らは家に戻ることにした

髪の毛につけたディップを洗い流し衣装を着替えその日はそれで解散ということになった

Aや瀬山たちが帰った後僕らはさっきのワクワクするような時間にまだ酔いしれていた

「楽しかったねえ~」「あのドーナツショップの店員マジでびびってたよ!」などと笑いながら話していたがふと気になったことがあった

その日初めてアパートにやってきたあの瀬山という青年・・・いきなりこんなことに巻き込んじゃったけど、困惑してなかったのかな 彼の表情からはなんともその結論を引き出すのは難しかった

「もしかしたらこれで懲りても2度と来ないかもね」「いきなり刺激強すぎたものね」

もうきっとあの青年は2度と僕らには接近してこないだろう・・・そんな思いがなんとなく支配していた

ところがそれから数日後、電話がかかってきた

「もしもし、瀬山です 今度ツッパリングはいつやるんですか?」・・・と

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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