仲田修子話 101

結果は当然・・・フィリピン人バンドの演奏が終り交代で修子が出て行くと、お客はそれが「インターバル」だと思ったようで皆ダンスフロアーから席に戻ってしまうのだ。 これはどうしようもないな・・・と修子も諦めながら演奏をしていた。

ところが、その店の支配人が修子のところにやって来るとこう言ったのだ。

「お客を踊らせてくれないと困るんだよ!」

それに対して修子は答えた。

「私が出て行くとどうしてもノリが悪くなって、お客さんが席に戻ってしまうんです。」

すると支配人は名言ともいえるこういう言葉を口にした・・・

「あのねえ、うちの店はねお客に君をのせてもらうためにお金を払ってるんじゃないんだよ 君にお客をのせてもらうためにお金を払ってるんだから・・・」

もうこれは諦めて別の店に移るか・・・とも思ったが、ここで負けて引き下がるのも悔しい なんとか出来ることは無いか・・・修子は色々なことを考えた。

まず1つ編み出したのはちょっと姑息な手だが、対バンが演奏している間にフロアーへ行きお客に「次に私がステージに上がった時にこういう曲を歌いますから、それで踊ってくれませんか」と直接勧誘してお願いして回ったのだ。

そして、出来るだけお客が踊りやすいようにビートとかにも気をつけて、曲目も選んで努力し続けた。 それでも踊ってくれるお客は現れなかった。 これはあの「アーサーベル」で歌い始めて以来の大難関にぶちあたってしまった・・・そんな感じの日々が続いた。

ところがある日・・・その日も一生懸命やっているにも関わらず誰も出てこないダンスフロアーを見て、修子もすっかり気落ちしてしまい「誰も踊ってくれないなあ・・・それなら」

もうなかばヤケになって「サマータイム」をすごくスロウなバラードで歌い始めた。

すると突然・・・30代くらいのアメリカ人のカップルがすうっとフロアーに出てきて、2人でチークダンスを踊りはじめた。 よく見るとその男性のほうは踊りながらそっと相手の女性の耳元で修子が歌っている同じ歌詞を囁くように歌っているのだ。 踊っている2人は本当に素敵だった。

「初めて私の歌で踊ってくれる人が現れた!」

本当にそれが嬉しかった。

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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