僕の八ヶ岳話 30

翌日、遅い昼食を摂ると友人夫婦は帰っていった

あらためて2人きりになって、はじめて新天地での僕らの生活がスタートしたことを感じた ベランダに面した窓を開けると爽やかなからっとした空気が入ってくる 鳥の鳴き声が周りの森から聞こえてくる あらためて「来たんだ」・・・と実感する瞬間だった

窓の外には緑が一杯・・・ではなかった

時は3月の末 東京ではもうサクラが咲き始めていたが、ここ標高1000mの八ヶ岳の山麓はまだ冬がようやく終わりかけ・・・早春の景色で、木々の枝先にはわずかに膨らんではいたが、まだ硬い芽が寒さをこらえていた

夜になるとまだまだ寒い 東京から持ってきたストーブを点ける 夕食を終え僕は外に出てみた 吐く息がまだ白くなる 周りは本当に真っ暗な夜の清里 ふと上を見上げた

すると・・・そこには本当に数え切れないほどの星が・・・満天を埋め尽くすような星がキラキラとくっきりとした光を放っていた しばらくそれを眺めていると、ふとあるものが目に入ってきた 東から西へ・・・太い帯状のうっすらと白いものが空を横切っていた 「雲かな?」・・・そう思ってた僕はやがてそれが何かようやく気付いた

「天の川だ!」

東京で生まれて育った僕にとって夜空はよほど明るい星しか見えなかった 天の川は教科書や写真では見たことはあったが、生で本物を見たのはそれが初めてだった 齢35歳にしての初体験・・・スゴイなあ・・・もっとずうっと眺めていたかったが限界だった 寒い!

3月末の清里の夜はまだ氷点下だったのだ

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