僕の八ヶ岳話 48

陣痛は定期的にやってきたが、なかなかその先へ進まなかった 医師が時おり診察に来て様子を見て首をかしげ「ウーン、あと少しなんだけどねえ・・」と言って立ち去ってゆく

いつしか時間が過ぎて3時間、5時間、8時間・・・と経ってもなかなかその先に進まない その間にも何組もの妊婦さんたちがやってきて先に済ませてしまう中・・・僕ら夫婦だけが時間に取り残されていた ついに夜になり深夜になった 相変わらずかみさんの陣痛は続いていた 僕もずうっと付き添っていたが真夜中になるとさすがに眠い うとうとと居眠り・・・しまいにはかみさんのベッドの横に寝て彼女が「う~~っ!」と唸ると目を覚まして「ヒッ・ヒッ・フーッ」とやっていた ついに白々と夜が明けてきた

夜間当直の看護士さんが出勤してきた日勤の看護士と交代をする頃・・・ついにその時がやってきた かみさんはベッドから分娩室へと移動 最後の痛みと闘っていた 僕もついつい力が入る そして朝9時頃だったろうか・・・ついに出産!

そのとき僕はなんだかムチャクチャ感動していた 何しろ長かった! 病院に来てほぼ丸1日・・・これだけの大変なことを乗り越えて人はこの世にやってくるのだな・・・この日のことはきっと忘れないだろう

出産後のかみさんも赤ん坊も容態は安定していた 医師からも「もう大丈夫」と言葉を貰ったのでとりあえず僕は家に戻ることにした。

丸一日留守にしていた我が家・・・そういえば何もかもそのままで出かけてしまっていた

家に入りリビングのテーブルを見て僕は愕然とした

昨日飲みかけでテーブルに置きっぱなしだった湯飲みのお茶が・・・凍っていたのだ

高円寺ライブハウス ペンギンハウス出演するには?

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