僕の八ヶ岳話 63

釣り場はやがてどんどん山の奥深く、それこそ誰も通わないような場所になっていった
その頃、一番気に入った河があった それは職場から車で一時間くらいかかるのだが、川上村から峠を越えた山の向こうに「南相木村」という山村があり、そこを流れる「相木川」という川が僕の一番のお気に入りスポットだった とにかくとんでもない山奥なのだ 途中までは車で行き砂利道の林道を進む やがて林道の奥に車止めのゲートがある そこから先は地元の林業に携わる人の車しか入れない そこに車を止めてあとは徒歩で上る 川自体は大して大きく無いのだが、とにかく素晴らしい渓流だった 進んでゆくと「瀬」と「淵」が交互にある 瀬とは水深が浅くて水の流れが速いところ、淵は逆で水深が深くプールのように水が貯まっている そこを進みながらポイントを探し魚の居そうな場所を探る この時決してこちらの気配を覚られてはいけないのだ ヤマメもイワナも極端に警戒心が強く、少しでも異常を感じたらすぐに岩陰などに逃げ込んで絶対に出てこない 運良く気配を覚られずに近付けたとしても、今度はこちらが投げた餌にはなかなか食いつかない とにかくもの凄く賢く警戒心が強い魚なのだ だから今までやってきた川べりからポチャンと餌を投げてぼうっと掛かるのを待つような釣りでは絶対に釣れないのだ


その反面、普段なかなか餌にありつけないという過酷な条件の中で生きている彼らはまた貪欲でもある その習性を知り尽くして、とにかくいかに警戒されずに上手く餌に食い付かせるか・・・ここにこの釣りの難しさと面白さがある まるで忍者のように岩陰に姿を隠しこちらの気配を覚られないように細心の注意で作った仕掛けを水に投げ入れる まるで自然に餌が流れているように糸と竿をコントロールする 何度やっても相手は餌に見向きもしない もうちょっとした動きの不自然さを彼らは見抜くのだ それができないやつは生き残れないからだ

高円寺ライブハウス ペンギンハウス出演するには?

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