僕の八ヶ岳話 78

Nさんからは色々なことを教わった どういう山菜がどういう時期にどういう場所によく出るか・・・見分け方とか・・・

とにかくNさんと一緒に山に入ると僕なんかが全く気がつかないところに山菜を見つけ出す、そのアンテナはものすごい感度を持っていた
「ほらほら、矢島さん・・・あんたの足元にあるじゃんけえ!」
言われてふと足元を見る・・・ん?・・・何も無い???
「ほら、そのちょびっと出てるの・・・それウドだよ!」
言われてやっと地面から5センチばかり顔を出している芽に気がついた もうちょっとで踏んでしまうところだった
「しかしNさんはスゴいなあ~なんでそんなに見つけるのが上手いのですか?」
すると彼はこう答えた
「あのね、山菜や木の芽ってそれぞれがそれぞれの”色”を持ってるんだよね、たとえばこのウドやタラノメはちょっと紫がかってるんだよね 山を歩いててその色合いを覚えてしまうと自然に目がそれを見つけてくれるっちゅうこんさ!」

へ~え・・・そんな「神業」みたいなこと・・・とても僕には出来ない・・・その時はそう思った その後も彼に案内されて色々な場所へ出かけた タラノメ以外にもコシアブラ、フキノトウ、イケマ、ハンゴンソウ、ワラビ、ゼンマイ、イタドリ、ウルイなどなど・・・実に多くの種類の山菜を教えてもらった 中でも驚いたのが「コゴミ」という山菜・・・これはアクが少なくさっと茹でてあえものにしたりすると美味しいのだが、これを教わった時僕は「あっ!」と思った

我が家の庭先に春になるとそれこそ一面に生えてくるシダみたいな草があって、僕はそれが邪魔で毎年草刈機で刈り取ってたのだが・・・それがコゴミだった

Nさんは山菜についての知識を色々伝授してくれた 山菜と似ているが、有毒で採ってはいけない植物・・・ハシリドコロ、スズラン、トリカブト、バイケイソウなどとそれに似た山菜の見分け方・・・そしてさらに大事なことも

「いいかい、タラノメは最初の芽を採ったあとにまた2番目3番目の芽がでてくるけんど、それは採っちゃダメなんだ それをやっちゃうとその樹は枯れてしまってもう2度と採れなくなるからな」
現在でも山菜は人気があって特に観光客が喜んで求めるのに応えて、地元の人間がそれを採って売りに出すというのが流行ってきた 天然の山菜は貴重でいい値で売れるので地元の人にはいい小遣い稼ぎになるからだ しかし、それと伴ってやたらに乱獲されてしまって、以前はどこにでもあった山菜が目に見えて減ってきて、ある場所では完全に絶滅してしまう・・・そういうことが頻発している
そういうことへの警鐘をその当時からNさんは懸念していた 自然を相手に人間はあまりにも傍若無人に振舞ってきたが、そのツケは結局自分に返ってくる 天然が与えてくれる恵に対して人間はあくまでも謙虚に振舞うべきだ・・・そう教えてくれた彼を僕は敬意を持って今でもこう呼んでいる 「師匠」・・・と

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