仲田修子話 49

そのハイヤーで家に帰る修子 男装してるのでてっきりどこかの良家の坊ちゃんだと思われたようでハイヤーの運転手からこんなことを言われた

「私はお客さんのような身分が羨ましいですよ・・・」

「なんでですか?」と訊ねると

「私らみたいな人間はこうやって汗水たらして一生懸命車運転して・・・それでも一生今お客さんが出てきたお店のように高級なナイトクラブなんて死ぬまで行けないんですよ・・・」
とこぼした

「それは誤解です!」と言いたかったが言うこともできず、まさか自分がパン屋の4畳半の間借り人だとも言えず、家の手前・・・高級そうな屋敷の前に来た時「あ、ここです」

と言って車を降りて・・・そこから歩いて・・・いつもの4畳半の部屋のドアを開けた

レスビアンクラブ「白川」の常連客であるその「社長」らしき人はなぜそんなことまでして「高い眠り」が欲しかったのか・・・今でも謎だし一体何が楽しかったのか、友達なんかは居なかったのか、何か悲しいことがあったのか・・・修子は色々と思い巡らしてみたのだが・・・真の理由は何だったのかいまだに解らない

こんなこともあった ある晩他所の同業の店からお客で来てたすごく凶暴な「おなべ」が修子に言い寄ってきて、仕事後「別のレスビアンクラブにいっしょに行こう」と誘われて同行した するとその店に居合わせたある女性客がバーテンに「あの人へ・・・」と言って修子にカクテルを奢ってくれた 途端にその凶暴な「おなべ」はその女性客をいきなり殴りつけると踵を返し、ビール瓶をカウンターにぶつけて叩き割って修子に詰め寄るとそのギザギザな割れ口のほうを修子の首に突きつけて・・・ 「今すぐホテルに行こう」ともの凄い形相で迫ってきた

しかも運が悪いことに後は壁だった そのとき修子は瞬時に考えた ここで手荒なことを言ったりやろうとしたらやられるなと・・・このとき幼児時代からたとえば母親からの暴力に対しても常に動じることのなかった修子の性格が幸いした 冷静になんとか相手を落ち着かせようと必死に言葉でなだめ続けた すると相手はようやく興奮状態から冷静さを取り戻し修子をつかんでいた腕を解いた こうやってなんとかその修羅場を無事に逃れることができたのだ

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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