昼ごろ雨の降る音で目が覚めた 正確にはそのだいぶ前から隣の敷地の建物を解体する重機の音・・というより振動で眠りを破られていたのだが・・・やっと重機の動きが止まったと思ったら「ザーッ・・・」という雨音が 小止みになったのを見計らって家を出た 町はすっかり雨の風景 自転車に乗って傘を差した女性が僕をかすめて抜いてゆく 後ろにチャイルドシート・・・子供を迎えに行くのだろうか そんな雨の日にふさわしい・・・かどうかはわからないが、今日のペンギンハウスライブはしっとりした空気が満ちていた
まず最初の演奏者ギタ-弾き語りの若者 らんぶりんたあとる たあとる=カメは彼の苗字から来ている 「さすらうカメ」ということだ 彼自身も言ってたが旅を歌った曲が多い ボブ・ディランに影響を受けたというだけあって彼はなかなかの詩人だ 「呪われたハイウェイ」というタイトルの曲の中の詞「・・・皆口にしてはいけない仕事を持っている・・・」なんて気になる言葉だな 若さと勢いだけでない、重厚な熟成された言葉を使うシンガーだ それと彼の歌い方にはどこか「フィールドハラー」みたいな節回しがあって 面白い
次に登場したのは、同じギター弾き語りのシンガーだがずいぶんと持ち味の違うソラトブだ 彼もずっと定期的にここに出ているが、さまざまなエフェクターを駆使して作るギターサウンドにボーカルにもコーラスやフランジャーをかけロウ~ミッドを思いきりカットした声で歌われる曲はいつも現実離れした世界を作り出す 油絵より水彩画・・・より水墨画に近いかな ハイテクを駆使したサウンドはなぜか俳句のような世界に・・・そうそう、彼はマスター亜郎の俳句仲間でもある
3番目は同じくギターの弾き語りだが今度は女性だ KANABOONというシンガーに僕は初めてお会いするのだがペンギンハウスにはもうだいぶ前から出演されているらしい その彼女がリハで最初に歌った曲・・・なんていう曲かは知らないがあきらかに昔のブルースだ ギターの音もいかにも「戦前ブルース」の匂いがぷんぷんする こういう音なら任せてほしい! マイク取りで僕が作ったギターサウンドを彼女も気に入ってくれたようだ そして本番 ゆったりと椅子に座ると渋~いブルースナンバーを歌い始めた いい声だ 本当にブルース歌うにはぴったりだ レパートリーはクラシックブルースや古いアメリカンフォークから「五木の子守唄」まで様々・・・歌うのを聴いてると僕は「オデッタ」や「カサンドラ・ウィルソン」なんかを思い浮かべていた それに「UA」もね(笑)素敵な空気を持ってる人だ もっと前にお会いしたかった・・・と思ったら実は以前お話したことがあった!それもすごくいい話だったのだ(詳細はカットするけど)
最後も女性シンガーだ 黒い羽織を羽織ってピアノの前に座る短めの金髪のシンガー・・・といえばもちろん藤原愛だ ところでみなさん、ひとつお知らせがあります・・・と言っても大したことじゃないけど・・・数日前から僕が取り組んでいたペンギンハウスの「ピンスポリモコンシステム」がようやく完成しました! ・・・と言ってもライトの器具に結びつけた2本の紐をこちらで引っ張るだけだけど(笑)でも、今までピンスポのパニングができなくてたとえばステージの左右に別れたフロントマンにスポットが当たらずなぜかドラムだけがライトを浴びる・・・というような「不祥事」がこれで解決されたわけで・・・そういうことでこの日ピアノに座った藤原愛にばっちりスポットを当ててやったぞお!
ゴメンね愛ちゃん、つまらないことで話を待たせて さて、今日の藤原愛はライトのせいもあってか(笑)輝くような演奏だった いや、これは完全に彼女の手柄だ どの曲も濃密で細やかでワイルドでセンシブで鬼のようで弥勒のようで・・・聞いてる全員が惹き込まれていたね その彼女のMCがまたよかった 「今日の出演者は らんぶりんたあとる/ソラトブ/カナブン・・・もうこれで景色が出来上がってしまって私の出る幕はございません」 いやいや、俳句ができるぞ
「カメが鳴く 空飛ぶカナブン 愛ひとつ」・・・だめ? 「雨男」のソラトブは今日も降らせてくれた
高円寺ライブハウス ペンギンハウス