僕の吉祥寺話 65

「ジミー、あのね・・・」

それは僕がぐゎらん堂に居て帰ろうとお会計をしていたときだったと思うgw-011-haruki & motoi

マスターの春樹さんが僕に話しかけてきた

「はい」・・・と応える僕に

「今度の○月○日って都合どう? もし空いてたらこの日に出演する○○○○って人のライブよかったら観に来ない? 女性でブルースの弾き語りをするシンガーなんだけど、いいんだよ」

・・・・と春樹さんは言った その名前は始めて耳にするものだった

「はい、わかりました 都合がつけば・・・」と言って僕はぐゎらん堂を後にした

その頃、ライブや音楽に対する僕の熱はかなり冷めていた ライブをすることにも観に行くことにもさほど興味がなくなっていた でも、家に帰るとふと春樹さんの言ったことが気になってきた

というのも今まで春樹さんが「この人いいから観においでよ」と僕を誘ったことはそういえば一度もなかったからだ ぐゎらん堂にはその当時かなりのすご腕のミュージシャンがゴロゴロ出ていたにも関らず・・・なぜ春樹さんは今回に限って僕を誘ったのだろう・・・考えるとちょっと不思議な思いがした

またその「ギター弾き語りでブルースを歌う女性シンガー」というのが心に引っかかった

その当時、女性でブルースを歌う、ましてやギターの弾き語りのシンガーなんて僕の知る限りではブルギ全然居なかった 居たとしてもたぶん僕が見たらとんでもなく”勘違い”をしてるパフォーマンスを見せられてガッカリするのがオチかも・・・それは女性プレイヤーを蔑視して言うのではなくて、そもそも男性だろうが当時のブルースの世界ってなんか僕が抱いているそういうものへのイメージとはかなりズレていて、それは今でもほとんど変わらないのだがいわゆる「コスプレ」みたいな意識でやってる連中がほとんどだったのだ

まあ、頭の中でその女性シンガーへの思いが勝手に膨らんでいたのは間違いなかった

そしてその日が来た その日は大学のゼミが長引いてしまって僕がぐゎらん堂に着いたのは5時を少し回っていた そう、ぐゎらん堂の「水曜コンサート」って前にも書いたと思うけど水曜日の午後5時からスタートという今では考えられない時間帯で開かれていたのだズメンケース

・・・で、その頃の僕はやっぱり真面目に生きてちゃんとした社会人になろうと決めて、ずうっとご無沙汰していた大学に真面目に通い始めていた すでに一年留年をしてしまっていたので来年はなんとか卒業しよう・・・そう改心してその日もゼミで提出した図面をケースに入れてそれを抱えてぐゎらん堂の扉を開けたのだ

中に入るとすでにライブが始まっていた ステージには3人のプレイヤーがいた

向かって左側にアコギを抱えた若者が一人、なんだか妙に素朴な感じでニコニコ笑いながら一生懸命リードギターを弾いていた その反対側にベースを抱えた若者が一人、こちらは正反対でなんだか妙につまらなさそうにちょっとふてくされたような表情でベースを弾いていた

そしてその2人を従えてセンターでギターを弾いて歌っている女性・・・今でもその時の彼女の姿をはっきりと覚えている

こざっぱりとしたスリムのブルージーンズに上は黄色にチエックの入ったシャツ その上から茶色いスェードのベストを羽織り、顔には銀縁の大き目の眼鏡をかけていた 腰ぐらいまでまっすぐに伸びたさらさらの黒髪を後でポニーテイルに結んでYAMAHAのアコギを抱えて弾きながら歌っていた その声が本当に素晴らしくなんていうかすうっと自然にこちらに届いてくる

一番後ろの席に座りながら僕は思わずこう思った「いいなあ~!」

それがそうなんだ 僕と彼女の初対面! ステージで歌っていた女性ブルースシンガー

それが 仲田修子 だったのだScan0003

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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