僕らの北沢話  35

その不動産屋は「T不動産」という今でも庚申通りでまだ営業を続けている いわゆる「街の不動産屋」といったちょっと鄙びた風情の裏通りによくあるアパートの賃貸情報などをメインにやっている小さな個人経営のお店だ

そのガラス張りの表の開き戸に貼ってあった一枚の賃貸情報に目が留まった003

『高円寺駅5分地下 家賃○万円、敷金、礼金・・・』というようなことが書き込んであり店の平面図が添付されていた 僕らの目を留めたのはその安さと「地下」という表示だった

今回修子から出されていた条件として「安いことそれからできれば地下がいい」というのがあった この「地下」という条件で絞り込むとなかなか出遭う物件が少なかった 今でもそうなんだろうが、地下の店舗というのは施工にコストがかかるのであまり安くならない物件が多かった

地下がいい・・というのはひとつは「ライブハウス」ということを考えると音の問題で地上の店舗はなかなか難しくなる あと「お酒を飲ませる店」というのはお客が酔って帰る時階段を降りるより登るほうが安全だ・・・という理由も含まれていた

そんなこんなで「これは」という条件を満たす物件に出遭えずにいた僕らはその情報を見てこれは「ピーン」と来るものがあった・・・これも勘だったのだけど・・・やはり間違ってはいなかったとその後に知った

そこでその不動産屋の中に入りそこにいた店の人に今の張り紙の物件のことを訊ねてみた002

すると・・・パンチパーマをかけてちょっともっさりとした感じのその人は「ああ、あの物件ね・・・」

・・・と妙にやる気の無さそうな声で応えると 「すぐそこだけど・・・どうする、見ますか・」と言うので「じゃあ見せてください」と応えるとやおら鍵の束を掴むと立ち上がった

彼に連れられて行ったその先に・・・

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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