さあ、6月もなんだかあっという間に終り近くなってもう28日(火)
今日のペンギンハウスライブは組み合わせがなかなか面白い・・・というか深いメニューになった
最初の演奏者はアコギ弾語りの 多田聡 今日は長年いっしょにやっているピアニストと「サトシ&リョウ」というユニットで登場した このアコギとピアノという組み合わせ・・・僕はけっこう好きだ
今日も多田のジャキっとしたギターにピアノの丸みのある音のマッチングがいい感じを作っていた
多田の歌は骨太であってそれでいてロマンチストでスィート 卓越したボーカル力と説得力のある歌で客席を惹き込む・・・気がつけば今では本当に少なくなったタイプの歌うたいだ
彼の声がまたいい ちょっとノドの奥で1回ぐるっと周って出てくるような・・・て言っても意味がわからないか(笑) とにかく声自体がいいシンガーだ そしてちょっと3枚目的なところも親しみがあって人気がある 今日は大勢の応援団が駆けつけていた
2番目はがらっと芸風・・・じゃなくて世界が変わる
女性ギター弾き語りシンガー 月原昌子 前の「サトシ&リュウ」が「動で陽」なら彼女は明らかに「静で陰」だ
でも決して「暗い」というのではないんだ 暗がりの中で「ウフフフッ」と笑ってる子供のようなちょっと可愛らしさと不気味さを持ち合わせた彼女の歌は独特のトラップみたいなものを持っている
物語り調で演奏される「ゆうこちゃん」の歌・・・これは「ゆうこちゃん」という女の子が「ひろしくん」という彼氏に執拗にまとわり付いてゆくというまあ簡単に言っちゃえば「ストーカー」の話なんだけどそれが尋常じゃない
なんとかひろしくんに振り向いてもらうためにゆうこちゃんは「あの手この手」を使うのだが・・・それはちょっとホラーのような恐さがあるのだ 夏が来るこの時期・・・おすすめですよ!(笑)
3番目はまた違う世界を持っている スギナミガールフレンドフォーエバー
京都出身のシンガ-ソングライターワカバヤシ(vo/g)はバンドとソロでの活動両輪でやっている
彼の持ってる歌の世界はまた彼独特のところにある なんていうのか妙に切なくて空しくてそれでいてどこかポップで乾いている
こんな喩えはどうだろう・・・どこまでも続く背丈よりはるかに高い金網のフェンス・・・たとえば東京の福生や沖縄にある米軍基地を想像してほしい その金網の向こうは「アメリカ」なのだ
それが外からもよく見える 触れそうにも見える・・・でも、一歩もその先には行けない
そんな不条理や空しさみたいなものが彼の作る歌にはある 今日はじめて公開してくれた「サイケな恋人」という曲に本当にそれを感じたのだ
そして今日最後に登場するのは 僕らのルバイヤート(丹沢亜郎with Tomo)
これにはちょっと説明が要るね
「生半可」の活動でおなじみの丹沢が今回は『ルバーイヤート』 これは、11世紀ペルシア(イラン)の詩人ウマル・ハイヤームの四行詩集の題名 その日本語訳に挑戦したのだ
バックサウンドにハーディーガーディー奏者のTomoが参加 そもそも亜郎が」これをやろうとインスピレーションを持ったのはやはりTomoの弾くハーディガーディーそして「タンブール」というやはり中東を起源にする楽器に出会ったからだと思う
いつもは自作の俳句を公表している亜郎が今日はその詩の読み聞かせを・・・始まる前に彼が言う 「この詩は実もフタも無くペシミズムに満ちています・・・聴いてて気分が悪くなった方はお帰りになってかまいません」 そして始まった
Tomoの出すサウンドは見事に中東の空気を運んできてこの高円寺の地下の空間を満たしてゆく
その音に見事なくらいシンクロしてゆく「ルバイヤート」の詩
「ペシミズム」と言われていたけど聴いてるとそれはむしろ「ニヒリズム」や「アナーキズム」に近いと思った 不思議なのはもう千年も昔の詩なのにちっとも旧くない むしろこれは今の日本の東京の高円寺にぴったりじゃないかと思えるのだ
もちろん誰一人帰る人は居なかった 終ると客席からは大きな拍手が・・・
それを見ながら僕は思った 「ペシミズムも悪くない」
高円寺ライブハウス ペンギンハウス