仲田修子話 34

父が死んで1年くらい経った 母千代がとつぜんある男性と交際しはじめた その相手はかなり高齢だったが 京都帝大法学部卒業で元検事という肩書きさらには会社経営者ということだった

男にすがることしか頭に無かった母は即座にその男と再婚した

修子もその時は気づかなかったが、あとで考えてみればその男の会社の名前も場所も一切聞かされてなかった そういうことを証明するようなものは一切無かった

母の再婚生活は最初はいい感じで順調に行っていたように見えた その男・・・新しい義父は確かに物静かでインテリぽくて普段から「中央公論」とか「ダイヤモンド」なんて本をよく読んでたし、ラジオでは「FEN」などをずっと聴いてて英語のジョークなんかで笑ったりしていた

彼には検事を辞めたあとはイギリスに行ってイギリス女性と結婚していたという話もあったがそれも裏付けるものがあるわけではなかった

結婚後一家は品川を離れ赤羽にあった「赤羽台団地」というところに引っ越した

間取りは2DK 母と義父が6畳、修子と弟が4畳半それにダイニングキッチンとまあその前の品川の風呂無しアパートに比べればかなり恵まれた環境ではあった

仲田家にもようやく少しだけ将来の展望が出来そうな状況がめぐってきた しかし、それがいつまで続くかはわからなかった 修子には不安があった そもそもこの新しい義父と母親ではどう見ても釣りあいが取れていない 母はもう散々述べてきたように低脳で無教養でヒステリック 方や義父はそれが本当だとすればものすごいキャリア経歴の持ち主で、そもそもこれだけ不釣合いな二人がどういういきさつで出会いそして結婚まですることになったのがむしろ修子には理解できなかった そして修子の不安は見事的中してしまうのだ

修子が高校1年生になった頃 それまでもぎくしゃくしていた母と義父は急にいがみ合うようになった すると義父はさっさと家庭裁判所に行き諸々の手続きをしてあっという間に二人は正式に離婚ということになってしまった

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