仲田修子話 53

修子の登場する場面の内容は昔の歌舞伎の「白波五人男」のパロディーで男装の麗人が5人登場してそれぞれキメの台詞を言うという内容で修子は「南郷力丸」という役名で揃った5人の中で最後にセリフを言うという演出になっていた 修子だけはそのセリフを(かなり長いのだが)全部自分で書いたのだ

ちなみにこれの土台となっている歌舞伎の「白波五人男」での「南郷力丸」の台詞はこうだ

さてどんじりに控えしは 潮風荒き小ゆるぎの
磯慣れ松の曲がりなり 人となったる浜育ち
仁義の道も白川の 夜船へ乗り込む船盗人
波にきらめく稲妻の 白刃に脅す人殺し
背負って立たれぬ罪科は その身に重き虎ヶ石
悪事千里というからは どうで終いは木の空と
覚悟は予て鴫立沢 然し哀れは身に知らぬ
念仏嫌いな 南郷力丸

一ヶ月の稽古が終りそしていよいよ公演が始まった いざ初めて舞台に立つと生まれて初めてのこともあり修子は自分のセリフを喋るところにくると膝が震えて止まらなかった 修子がそのことを舞台の演出家に告げると「そのうち納まるよ」と軽く言われたが・・・結局2週間続いた公演が終わるまでそれが直ることは無かった

初日の舞台が終わると寺山が役者全員を集めてこう言った

「“星の大工”という役のセリフを覚えている人は居ますか?」というので「はい」と手を上げたのが修子だけだったのでその翌日から彼女は二役をまかされることになった

それには訳があって劇団の一ヶ月の稽古期間中、修子にとってははそれが退屈だったので暇つぶしに台本を読んでいて他の役者の分のセリフもすべて覚えてしまっていたのだ

代役を立てなければならなくなったのは元々その星の大工の役を演じてた役者が初日が終わったあと睡眠薬と大酒を飲んで入院してしまったからなんだが、その役の演技でセミヌードの女性と絡むというシーンがあったので

「それはけっこう恥ずかしかった」と修子は今語る

「今思えばあの寺山って人は”覗き”が趣味ってか性癖があったんじゃないかな・・・役者たちに色々なシチュエーションでシーンをやらせてそれを観て自分が楽しむって・・・」

と、修子は語るが実際寺山修司は80年にアパートの敷地に忍び込み覗きをした容疑で逮捕されている

思えば彼もあのレズビアンクラブに女性同伴でやってきて修子とその女性を踊らせて楽しんでいたお客とどこか通ずるようなところがあったのかも知れない

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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