修子が次に就いた仕事は王子にあった某大手化粧品会社のやはり工場勤務だった そこでの仕
事は「ファンデーション」を作る作業 原料の粉をものすごく厚みのある金属の筒状のものに入れてそれをセットする そこへプレス機が回ってくる バーンと圧縮されその工程が終わると次にプレス機が来る前にその筒状のワクを外し下からまた重たいワクを持ち上げてセットするという今まででも一番の重労働 プレス機を扱うので危険もすごくあった テレビではそうやって作られた製品にすごくお洒落な感じのCMが流されていたが実際にそれを作る工場は金属と油の匂いが充満した完全な「３K 」色彩のまったく無い世界・・・ 昼飯は毎日会社が工員向けの仕出し弁当を取っていたが高くて不味かった
賃金はやはり前の仕事とほとんど変わらない・・・相変わらず毎日毎日が灰色で記憶がモノクロだった その頃修子はいつもおなかを空かせていた 当時家で休みのときウドン玉をひとつだけ買ってきてそれをただ炒めてウスターソースをかけただけの焼きうどんを食べるのがゼイタクなくらいで「いつかこれを２玉一編に食べてみたい」というのが当時の夢だった 家の食事は相変わらずごはんと味噌汁だけ作っておかずはそこらへんでコロッケとか買ってきてやっと食べるといった感じ 未来に展望なんかまったく持てなかった
中学１年のとき教師たちから「お前は御茶ノ水大学くらいは確実に入れる」と言われていた自分が今は機械に使われてものすごい薄給で働いている
その中学時代にすごく勉強のできなかった同級生・・・それはお寺の娘だった・・・がアメリカに留学したという話をどこかから聞いて
「もうやってられるか！」・・・と彼女は２度目の自殺を決行することにした
挿入曲「ウオータースネイク」
作詞作曲：仲田修子 2008年ペンギンハウスライブ より
どうせ死ぬなら平泉の中尊寺にしよう・・・源義経がそこへ逃げたという歴史の話を覚えていてそこに決めたのだ 人間は死のと思うと南ではなく寒い北のほうへ行きたくなるのかも知れない・・・そう修子は回想する 列車に乗り平泉に付いたのはそろそろ日が暮れ始めるころ
自殺の手段は色々試してみたがやはり睡眠薬がいいということに決めブロバリンを購入した
平泉には着いたが中尊寺は観光客や人が多いのでそれとはまったく別方向の人気の無い山の中に入っていって睡眠薬を飲んだ・・・睡眠薬を１００錠飲むことは想像以上に大変で吐き気がしてくるのだ それを無理やり飲むためにそのときはオレンジジュースを使った（その後そのことがトラウマになってつい５年ぐらい前まで修子は大好きだったオレンジジュースが気持ちが悪くて飲めなくなった）
遺書も遺した それまでの色々なことに対する恨みつらみを書きなぐりさらに「ベトナム戦争には反対です」という言葉も添えた
睡眠薬が効いてきた・・・徐々に意識が無くなってきた
高円寺ライブハウス ペンギンハウス
