仲田修子話 102

それから修子はもう1度気を取り直して必死で努力をした。 頭も使った。 たとえば、日本民謡の「大漁歌いこみ」なんて曲をまるでJ,Bのようなリズムと歌い方で歌ったりとかスピリチュアルの「Swing Low, Sweet Chariot」をダンサブルにソウルミュージックのように歌ったりとか・・・


すると、次第に彼女の演奏で踊るお客が増えてきた。 しまいにはフィリピン人バンドのときより修子が演奏するときの方が、お客のほとんどがダンスフロアーに出てきて烈しく踊るようになって・・・しまいには集団ヒステリーのような大騒ぎにまでなってしまった。

そしてある日・・・

以前「お客を踊らせてくれなくちゃ」と文句を言った支配人がまた修子のところにやって来て今度はこう言ったのだ。

「いやあ、仲田くん・・・ちょっと客を客席に戻るようにしてくれないかなあ・・・オーダーが全然来なくて困るんだよね。」

その言葉を聞いて修子は心の中で叫んだ 「勝った!!」・・・と

そのディスコでの仕事はかなり長く続いた。 一日になんと5ステージを務めていたのだが、一番ハードな時はさらにその仕事の後、今度は家の近くにあったヤクザ系のお店で「ナイト」の仕事をするようなこともやっていた修子・・・。

その店があったビルにはそれぞれ違う「組」の事務所が3つほど入っていた。 そこに居た「組員」の人たちはあまりぱっとしない感じで、時々修子の友達の男の子がそこへ聴きにくると、彼を取り囲んで「俺の舎弟にならないか」「いやオレの舎弟に・・」というスカウト合戦が始まるので、呼ばれた友達は「もう行きたくないよ」とすっかり寄り付かなくなってしまった。

ある日・・・そこに覚せい剤のやりすぎで精神病院に入院していた組員が退院してお客でやってきた、 もう治ったのかなと思うのも束の間、その男がいきなり暴れだした。 その暴れっぷりはそれこそ猛烈でかなりガタイが良かったとはいえ、ソファーを掴んで放り投げるなど大暴れして店をメチャクチャにしてしまった。

修子もこれはヤバい、ギターでも壊されたら困る・・・そう思って店から抜け出し、そのビルの2階にあった店の経営者の愛人が居る部屋に行き、ドアをガンガン叩いて「入れてくれ!」と必死で頼んだが、むこうはしっかりカギをかけて部屋の中で息を殺していて絶対に開けてはくれなかった。 仕方ないので修子はギターを抱えて。階段の隅っこで鳴りを潜めて事態が静まるのを待つしか無かった。

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

出演するには?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする