仲田修子話 130

それらの「ごっこ」の中でも一番盛り上がったイベントがあった

それは「ツッパリング」と呼ばれた これは皆でツッパリ風の衣装とメイクをして街へ出て行く・・・そういう遊びだった 「ツッパリ」については増田がその道の「プロ」だったので、皆彼の指導の元衣装や髪型を整えていた

その最中、あのみっちゃんが訪ねて来た しかも独りではなかった 彼女の後ろに1人の若い男性が居た みっちゃんがこう言った

「オサムちゃん(みっちゃんは修子のことをこう呼んでいた)今日は友達を連れて来たんだ ジャズドラムをやってるケンちゃんです」

紹介された青年はなんだか子供っぽい顔をしていた 内気そうで無表情なその顔は何を考えてるのかわかり辛かった

「ちょっと変わった子だな」 そう思った修子だが、その日はあまりそんなことに構っているヒマは無かった とにかくこれから皆でそれぞれ扮装して「ツッパリング」に出かけるのだ 面倒だったからその子も一緒に連れてくことにした 適当に衣装を見繕って彼に着せ、そして一同は車に乗って出発した ちょうどお盆休みの時だったので街はガランとしていた とりあえずどこに行こうか・・・・ちょっと迷ったが、青山あたりにあったフランチャーズのドーナツ屋に入ることにした 全員目一杯ツッパッて、これでもかと恐そうな表情で肩で風を切って・・・あきらかに怯えている様子のほかのお客や店員の様子を見て「ふふふ」と心の中では笑いを堪えながら・・・

そしてこの「ツッパリングツアー」は終了した

再び北沢のアパートに戻り全員服を着替え、そして大声で今のイベントについて語りあった 「面白かったねえ」「あの店員、明らかにビビってたねえ」 みんなかなり興奮して・・・そして楽しそうだった

その中でただ1人・・・あの今日来たばかりの青年は相変わらずほとんど感情を表に出さず楽しかったのかどうかも判断できなかった

その青年が帰ったあと、修子たちは話し合った

「あの子どう感じてたんだろうねえ」

「あまり楽しんでは居なかったんじゃないかな」

きっともう2度と彼はここへは来ないだろう・・・誰もがそう思っていた ところが

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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