仲田修子話 141

東京は杉並区 高円寺駅から歩いてわずか4~5分のところにオープンした「猫屋敷」 それは修子たちの汗の結晶で彼女にとっても初めて自分の「城」になるものだった

もちろん「城」と言ってもまあ普段は飲み屋なので、お客が来なければ話にならない

ところが、オープンして1ヶ月2ヶ月が経ち・・・最初の頃、開店祝いに来てくれた友人や知り合いもそうそうは来てくれなくなると・・・猫屋敷は閑散とした日々に飲み込まれるようになっていった

一生懸命駅前でフライヤーを配ったり、近所の銭湯に案内のポスターも貼ってもらった しかし、客足は一向に伸びる気配が無かった

その頃には修子も有海も増田もすでにハコの仕事はやめてしまっていたので、その狭いわずか6坪ほどの店のカウンターの中に、修子、矢島、有海、増田、瀬山の5人が居たのだ

居てもお客はほとんど来ない 大概の日々はカウンター内の人数が客数を上回っていた そうすると当然退屈してくる 誰よりも退屈が苦手な修子は・・・ここでも、あの北沢のアパートでやっていた「○○ごっこ」というのをやり始めた

何人かは出来ていた常連たちを集めてその店の中で即興のお芝居をするのだ 中でも修子が一番気に入っていたのが、お客や従業員を二手に分けて「白ゆり女学園vs黒ゆり女学園」のスケバングループの抗争という即興のお芝居をやらせたのだ

ところが、さすがこの地下のいかにも怪しげなその名も「猫屋敷」の常連になるような連中は少しも嫌がるどころか、むしろ嬉々としてその「演劇」に参加していた

しかし、時には本当の抗争になることもあった

高円寺という限りなくサブカルな街にはまたそれに見合うだけ変なやつが多かった 変でもまあ愛すべき人物ならいいのだが、ただやたらと攻撃的で毒を吐くような輩が、なぜか次々と・・・やってくるのだ

これは筆者も後に自分で店を開いて体験したのだが、こういった連中は大抵どこへ行っても問題を起こし嫌われてその店に行けなくなるので、新しくオープンしたばかりの店が彼らのターゲットになるのだ

しかし、ここへやってきたそういった輩たちは運が悪かった

何しろ店の中には退屈しきってた修子、そしてツッパリや喧嘩なら飯より好きな増田をはじめ血の気が多い連中がごろごろ居たのだ おまけに修子は「万が一に備え」て店内に木刀それにヌンチャクまで備えていたのだ こうなればもう「飛んで火に入る夏のゴキブリ」だ

深夜の街をボコボコにされて必死で逃げる男・・・そのあとを木刀を持って追う修子の声が響く

「待て~~っ!!」

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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