僕の八ヶ岳話 1

ことの発端は今から40年くらい昔・・・

僕の父・・・彼は電気工事業をやっていた 当時はけっこう建築関連の業界は景気が良かったので父もそこそこ財を貯め込んでいたらしい

その父がある日、不意にこんなことを言った

「おい、今度の休みにちょっと付き合ってくれ。見て欲しいものがあるんだ」

そして約束したその日、自分が運転する車の中で彼はこんなことを語った

「実は今から行く山梨県の八ヶ岳に清里という場所があるんだ・・・そこの土地を買おうかと思って・・・お前にも見てほしいと思ってさ」

父がその頃田舎に土地を探していたのは知っていた 元々長野県の飯田市で生まれ育った彼は、戦後すぐに東京に出てきてまずアメリカ進駐軍のベースキャンプで働き、その後独立して家電店を開く そしてやがて電気工事の事業を始めた 商いは順調で経済的にも余裕が出てきて、そろそろ老後のことを考え始めていた 「出来れば長野のどこかに家を建てたい」そう口にするようになっていた そんな父の言うことに僕はほとんど反応をしなかった 真面目で無口で頑固な彼から僕は子供の頃から褒められた記憶が無い はっきり言って僕は彼が苦手だった

だから、大学も中退して家を出た僕は音楽仲間たちと「猫屋敷」という店をやっていた

父とどこかへ出かけるのも本当にすごく久しぶりだった

八ヶ岳に向かう道は子供の頃から何度も通っていたが、その頃はまだ高速道路がなく国道20号線をとろとろと走って甲府の市街を抜けて景色がぱあっと開けてきたあたりで行く手の右側に見えていたのが八ヶ岳だった

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

出演するには?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする