そうそう・・・シバの話をしよう
アルバム「コスモスによせる」を発表後、順調にソロシンガーとして活動を続けていた彼、僕もたまに呼び出されて彼のバックで演奏したり前座で歌ったりしていた
”コスモス”を製作したときはちょうど僕と出会ったばかりで、それもあってかどちらかというとカントリー・・・それもジミー・ロジャースの影響をかなり受けたスタイルで曲も演奏も出来上がっている
しかし、その後彼のスタイルも徐々に変化してゆく
そのプロセスの中である日、スタジオに僕らは出かけ何曲かを録音した 74年のことだ
顔ぶれはシバと僕それに鳥井ガク、村瀬春樹さんというメンバーだった
具体的に何かアルバムを作るためというのではなく要するにデモ音源のようなもの その中で僕はエレキギターを弾いたりタンバリンを叩いたりしている ガクはハープを吹いていた 春樹さんは「ジューズハープ」で参加している
だから演奏もかなり実験的なものやちょっと中途半端なようなものも混じっていたが、明らかにシバが「次の何か」を模索していたのはなんとなくその当時の僕らにもわかっていた
そしてその日は数曲を録音し、それをそのあとで聴いて・・・僕らはそのことはすっかり忘れていた
それが30年近く経ったある日、突然「長距離電話」というタイトルで「シールズ・レコーズ」から発表された その当時シバが自宅でオープンリールテープレコーダーで録音していた曲も含めて全部で15曲 ほとんどが未発表かあるいは発表されたのとは別バージョンのものだった
この発売の前にシールズレコードの方から僕に連絡が来た 「シバさんの昔の音源を発表したいのでジミーさんの了解をいただきたいと思いまして・・・」
「ああ、いいですよ」・・・というか全く忘れていたし、そんなものがまだ保管されていたことのほうに驚いた きっとシールズの方はガクや春樹さんのところにも連絡したんだろうなあ
ジャケットの写真はモノクロで当時のシバがギターを抱えて座ってる 様子からどこかのコンサート会場の楽屋のようだ
中には何枚かの写真が挿入されているが、前にも紹介した春一番コンサートのときのシバをサポートする僕と鳥井ガクの様子とか、あとどこかのステージで演奏するシバ、いとうたかおと田中研二と一緒にバイオリンでセッションしているシバなどが写っている
シバも一貫しているようで少しずつそのスタイルを変化させてきたところがあって、また漫画やイラストも描いていた「三橋乙揶」としての画家としての一面もあり年代によっては音楽よりもそちらのほうへかなりシフトしたり・・・そしてこのアルバムを聞いてみると明らかに次の何かを模索しているのが見えるのだが、その「次の何か」にまたまた僕が絡んでゆくことになるのは・・・その当時はまだ予測ができなかった
その「何か」とは・・・続く
高円寺ライブハウス ペンギンハウス