僕の吉祥寺話 66

ぐゎらん堂ではじめて出会ったシンガー仲田修子 彼らはユニット名を「ペーパーナイフ」と名のっていたScan0006

ベースを弾いていたのが増田という男、そしてリードギターを担当していたのが有海・・・そう!今でも仲田修子のライブのメンバーとして活動している有海治雄だ・・・彼はこの時すでに修子と一緒にやっていたのだ もう40年になるんだねえ

076

ところで、この3人の姿を見ていて僕は奇妙な感じがしていた 増田はなんだか目つきが鋭くてあ きらかに「ヤンキー」っぽい雰囲気を漂わせていた 有海はなんだか地方から出てきたばかりで何もわからない、素朴だけど簡単に人に騙されそうな若者のように見えた その彼らを率いていた仲田修子・・・彼女はシンガーというよりもインテリっぽくて学校の教師のような雰囲気を持っていた

そこで、僕は自分の頭の中で勝手な想像を作り上げていた

「この二人の若者はきっと何か問題があって”保護監察”されている状態なんだ そして彼女はその面倒を見ている”監察員”か何かで、きっと彼等を社会更正させるための活動としてこういうライブとかをやっているのだ」・・・と

この話を後日修子にしたら「そんな風に見えてたんだ!」と爆笑されたが・・・とにかく今までのぐゎらん堂などで僕が出会ったあらゆるミュージシャンとまったく違うタイプの人たちだったことは間違いない

そして、僕は彼らが演奏する曲におおいに心動かされていた

たとえば 「ドライジンブルース」 これはちょっとアップテンポのブルースで粋なジャズっぽいスタイルで歌われてた

♪今夜も 私は 行きつけの酒場~

洒落たつもりでドライジン ドライジン 飲んで~

ジュークボックスに 百円玉 投げる ♪

かと思うと「その気になってさ」 これはスロウな三連譜のブルースで歌い方もかなりヘビーな感じ

♪その気になってさ 風の吹く街 走り続けた

私毎日騒いでるのさ この広い街の中で

私ひとりが その気になってさ♪

その歌う曲ひとつひとつで仲田修子というシンガーは歌い方やテイストを変えつつ、なんとも洗練されて粋な感じでそしてその歌い方はよくブルースをやってる連中が持っていた変な思い入れとかわざとらしさが一切ない、クールなんだけどシンプルでわかりやすい歌の言葉がすごくダイレクトに心の中に入ってくる・・・そういう歌い方をしていた

「いいなあ~・・・」僕はもう一発で彼女の歌のファンになってしまった

そして演奏される曲がひとつひとつがまるで違う場面をくっきりと見せつつどんどん新しいものが出てくる・・・これは今の修子ライブでもそうなんだが、これだけ違う曲調のナンバーを歌ってるシンガーなんて他に僕は知らなかった

「国立第七養老院」「シンデレラのお姉さん」「お夏」・・・など今でもすっかりお馴染みになっている078これらの名曲をあの当時から彼女は作って歌っていたのだ

彼らの演奏を聴きながら僕の頭の中はそれまでずうっと立ちこめていた”もや”のようなものがすうっと消えてゆくのを感じていた 「これだ、これなんだ!」

武蔵野の中で「裏切り者」となって孤立していた僕にやっと「仲間」と呼べそうなシンガーが現れた・・・そう感じたんだと思う

そしてライブが終わった なんだか妙にテンションがあがっていた僕はその時とんでもないことを彼らに持ちかけたのだ

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする