僕らの北沢話  34

資金稼ぎのプロジェクトが始まって数ヶ月が経った ある日全員を集めて修子が言った

「みんなよくやったね、頑張ってなんとか資金が○○円貯まったよ これだけあれば都内に小さな店舗借りて店を開くことができると思うんだ」

そう・・・皆で必死の思いで節約もして稼いだ資金がなんとか予定の額になったのだ!

こうして僕らのプロジェクトはいよいよ第二段階へと入ってゆくことになった

その数日後から今度はライブハウスを開くのに適したそれも安くていい物件・・・をさがす作業が始まった まず最初は僕らがいる沿線・・・小田急線沿いに「物件探し」が始まった

最初は「下北沢」とも思ったが、すでに吉祥寺に次いで「若者の街」となっていたこのエリアはなか下北駅前なかハードルが高かった それで駅をひとつひとつ降りながら色々な物件を探してみた

しかし、とにかく手持ちの予算がかなり厳しかったので「これは」というものに出遭えずにムダに日数ばかりが過ぎていった

そこで方針を変えた 小田急線にこだわらずに他の路線も探してみようと・・・

そこで真っ先に浮かんだのが「中央線沿線」 なにしろここらへんは僕も「土地勘」が利くし、吉祥寺はムリだとしてもどこかほかの街に何かいいものがあるんじゃないか・・・そこで次の日から今度は中央線の駅前を探すことになった

その日は僕と有海がコンビで物件探しに出かけたアサガヤ

「荻窪」を見てそれから「阿佐ヶ谷」・・・どちらも「これ」と言ったストライクゾーンに入るような物件にはめぐりあえなかった

じゃあ今日はもう一箇所だけ見て・・・そろそろ夕暮れが近かったしそれでダメなら今日は帰ろう・・・そう相談しながら僕らは高円寺の駅を出た

駅前に出ると斜め向かいに商店街があるのが目に留まった そこには「高円寺銀座」と書いてあっ1221387881_6た 今の「純情商店街」のことだ 当時は「ねじめしょういち」の同名の小説がヒットする前(その後この小説のモデルになったこの商店街が改名したのだ)だったので、まあ地方のどこにでもあるような名前がこの通りにもつけられていた

その商店街を歩きながら僕は妙な気分にかられていた 「高円寺」という街に来たのはこれがはじめてではない ただ、どちらかというと隣の阿佐ヶ谷に行くことが多く高円寺はあまり馴染みのある街ではなかった だが、この街の空気が・・・なんだか理由はわからないんだが妙なとてつもないパワーを抱えているような・・・それも何か地面の底から湧き上がってくるような「ドヨーン」としていながら「したたか」なパワーを秘めているような空気が充満しているような・・・そんな漠然としたものを僕は感じていた

「この街には何かがある」・・・ほぼ確信みたいなものを僕は持った ただの勘なのだが・・・でもそれは間違っていなかった・・・今でもそう思う

通りを歩くとしばらくして突き当たりになった しかしそこから道は左右に別れている 人通りは多くがそこを左へと流れていた 僕らもその流れに飲み込まれてみた するとすぐ先にもうひとつの今度はちょっと細い商店街が続いていた 名前は「庚申通り」と言った

その商店街に入ると街のごちゃごちゃした感じはさらに強まった ちょうど夕暮れ時の少し前、買い物をする人々やヒマそうにぶらつく人たち・・・そんな人たちで通りはけっこう混雑していた

そのときだ、ふとある不動産屋の前で僕らは足を停めた

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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