僕らの北沢話  37

「高円寺の物件」という情報を僕らは持って北沢のアパートに戻った 修子らが待っていて「どうだった?」と訊くので僕はさっき見てきた高円寺の地下の空き店舗の話を伝えた

そのとき、なるべく個人的な思い入れなどは入れないようにつとめて客観的に冷静に話したつもりだった ところが、修子は僕の話し方の中にいつもとは違う異様なテンションが混じっているのをすぐに見抜いていた あきらかに僕はちょっと興奮していたのだと思う

「その物件さ・・・今から見にいかない?」そう修子が言い出した

彼女も僕の伝えた話にちょっと食指が動いたようだった こういうときの彼女の直観力はすごい

普段は実に慎重で冷静な彼女なのだが「いざ」というときの行動は本当に鋭くて早faa0960eい・・・それは獲物を見つけた大型猫種のような反応なのだ

さっそく車に乗り皆で再び高円寺を目指した もうすっかり夜になっていたと思う

さっきの不動産屋に行き事情を説明し再びあの地下室を見せてもらうことにした ドアをあけ中に入りその光景を眺めながら修子はしばらく考えていたがやがてこう言った

「決めた、ここにしよう ここがいいよ 気に入った!」 もう鶴の一声だ

何かを決定する時の彼女は色々考えるのだがやはり最後は直感を大事にする それは今でも・・・たとえば人と出会う時も何よりも第一印象が大事だと、彼女は常に言っているが、そのときその空間が彼女のアンテナにピーンと引っかかったのは間違いない そして僕も自分が感じたものと同じようなものを彼女が感じてくれたことを嬉しく思った

そしてその足で不動産屋に戻りもうすぐに契約の話に入った 敷金、礼金、前家賃、手数料・・・諸々のものを総括した交渉がそこで始まった そういうときの仲田修子は実に頼もしい

まったく何にも動じず相手に対して決して無礼ではない態度ででも毅然として言うことはしっかり言う 求めるものはしっかり求める・・・それは彼女が今まで過ごしてきたハードな人生から掴み取ったものなのだ 今では彼女のことを「親方」と言って慕う人もいるが、本当に頼りになる人なのだ

諸々の必要な書類や手続きはまた日をあらためて・・・ということで戻ったのだが、とにかくついに僕らのそのあとの音楽ライフの最初の拠点になる場所がついに見つかったのだ

そして、その街の名前は・・・高円寺002

長い長い高円寺との付き合いがこのときスタートしたのだ

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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