さて、まずはこちらの写真を見ていただきたい
これ・・・超レアものというか世界に一台しかないレゾネーターギターだ
・・・というのも僕が自分で作ったのだ
作ったのは今から20年位前、当時どうしても「ナショナルタイプ」のリゾネーターギターが欲しくてあちこち探したのだが、その頃はナショナル社による復刻版も作られてはいたがまだ日本にはなかなか入ってこず、たまに楽器屋に入る昔のビンテージものはびっくりするくらい高額でとても手の出るような代物ではなかった
手に入らないなら・・・作っちまおう
そう思い立ったのだ 幸い構造はほぼわかっていた まず土台にするギターだがこれは僕が持っていた超安物のアコギを一台壊して改造した トップの板を取り外しボディーにあわせてカットした5ミリくらいの厚みのあるベニア・・・昨日も述べたようにこの部分は振動しなくていいので・・・幸い僕はそれまで木工とかの作業を散々やって工具も持ってたのでこれくらいのものを作るのは朝飯前、あのナショナル特有の f ホールも作るのは難しいことではなかった
写真に写ってるリゾネーターのカバーは仕事場にあったアルミのトレイをカットして穴を空けて作った ブリッジの部分は贅沢に黒檀を丸々使ってる
さて、問題は「リゾネーター」だ ここには薄くておわん形をしたアルミが必要なんだが・・・なかなかそういうものがない ちなみに今はネット通販でわりと簡単にナショナル社からこのリゾネーターだけを購入することができる けっこう壊れやすいパーツなのでサプライは充実してるみたいだ
だが、当時はそんなことも知る由もなかった
ところがある日、僕はホームセンターで買い物をしていておあつらえ向きな材料を見つけた 何だと思う?
それはどこの家庭にもよくあるアルミの「文化なべ」・・・・そうそうこれだ
この蓋の部分が大きさも形もちょうど良さそうだったのだ さっそくこれを購入、たしか780円だった そして蓋の部分のまず縁をギターの穴に合わせてカット 真ん中もブリッジが乗っかる部分にあわせてカット だがここでひとつの課題にぶつかった
かなり薄いとはいえ鍋の蓋だ それはとてもじゃないがリゾネーターとしての役目を果たすにはあまりに厚みがありすぎた
そこでどうしたか・・・僕はその蓋をひたすら紙やすりで削りはじめたのだ その作業は何日も何日もかかった 仕事から戻ってくるとひたすらヤスリでジャコジャコ削る 仕舞いには自分の寝床のすぐ横にそれを置いて眠るまで削り、朝起きてはまたすぐ削る・・・という日々に
当時それをみていたかみさんは「ついにどこかおかしくなったか」と思ったそうだ
そうしてかなりの難産だったがやっとなんとか使えそうな厚みまで削ったリゾネーター そしてそれを取り付けてついに弦を張った
チューニングをあわせて弾いてみた 「グワーン~~~」
うん、音が出た そのサウンドはナショナルのリゾネーターギターとはだいぶニュアンスの違うものだったがとても鄙びてまさにブルースを弾くにはぴったりな音がした
総制作費1000円以下・・・にしてはいい出来だよなあ(笑)
このギターは今でも僕の家にある ネックとトップのつなぎ方がいいかげんだったのでその後ネックが恐ろしく反ってしまい今では演奏には使えないがあの音はまだそのままだ
そして蓋を奪われた鍋の本体は・・・いまでも家の台所で現役で活躍している
高円寺ライブハウス ペンギンハウス