1本の糸     4日

今日のライブを見ながらふとこんなことを考えていた

天空に張られた一本の糸

それは誰の目にも見えない

その一本の糸の上を渡ってゆく者たちがいる

彼らがその糸を辿ってゆくにつれこすれた糸は少しすり減る

そこにまた少し糸を足して渡りきる

次の者がまた渡り始める 静かに ゆっくりと

渡り終えるとまた同じように糸を足してゆく

糸は僅かずつだけど 太くなってゆく

今日4日のペンギンハウスライブ 最初の演奏者は ジ・アナトミアズ
東京セッションのメンバーマツイ(g)とヤマグチ(ds)が組むインプロユニット その規則的リズムの上から発せられる予測不能な演奏は聴く者を未体験の世界へ連れてゆく

いつもわりとそうなのだが、今日の彼らの演奏の始まりは極限までの静けさから始まった

それはまるで真夜中の森の漆黒の闇の中で何かが目覚める気配・・・のように

100%生音のドラムとさまざまな糸を張り巡らせた繭の中にいるようなギターとの組み合わせ

不思議な融合が・・・今夜もそこで起きている
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2番目はそのアナトミアズがそのまま残り、藤原愛がピアノで参加 それらのミュージシャンを従えて丹沢亜郎の俳句ユニット 生半可 が始まる
今日の季語はやはり「秋」だ 「赤とんぼ」「ウスバカゲロウ」などの言葉・・・

今日僕が気に入った一句はこれ

「入り口は 落ち葉溜まりの ラブホテル」

今日の生半可バンドの演奏は途中でものすごくヒートアップしてそれは句を読む声をかき消してしまいそうになるほど・・・お互い馴染むことと並行して緊張感が強まっている
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その生半可の演奏が終わってステージに残った 藤原愛

あ、もちろん衣装とメイクは変えてね! 「黒衣の女」としてステージに戻った彼女の今日最初の曲は「山眠る」・・・僕が大好きな曲だ

この歌の歌詞に出てくる「湯たんぽのような 村一つ 懐に・・・」という一節がお気に入り

「初雪」という歌詞も出てくるし・・・この歌の「季語」はもう冬だけど

そういうふうに始まった今夜の彼女は「俳句のように短い歌を繋げて演奏します」・・・と

僕はなんだか今日は妙にその歌の歌詞に聴き入ってしまった

「嫌われアンヨ」という歌に出てくる船乗りはなぜ足がジャマになってしまったのだろう・・・

「からっぽ、がらんどう」ってタイトルの曲かな・・・この歌の世界がすごい

死んだ私は肉体をカラスについばまれ、その子供たちの胃の中で虫たちと一緒に消化され排泄されやがて土になり、その土を陶芸家がこねてお猪口になり、それが「あなたの口に酒を運ぶ」・・・まだオチがある

「あれ、このお猪口 端が欠けている・・・口に広がる血の味・・・」だったかな

いやあ、この想像力と展開力って何なんだ、すごい! そう思ってずうっと彼女の演奏を聴いていた僕は終ってからはっと気がついた

「あっ、写真を1枚も撮ってない!しまった!」 たまにそういうときがある それは僕がステージに集中しすぎていた証しだからね(笑) そういうわけで今年のフジワラアイのアンソロジーでも・・・ごらん下さい
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そして一本の糸の最後を渡るのはこのグループ フレデリック書院
アコーステジックギター弾き語りの鬼才山田庵巳があらたに組んだユニット ジプシージャズ風のサウンドにのせて新しい庵巳ワールドを作り始めた彼ら・・・少し前からクラモトキョウコ(アコーディオン)が加わり、さらに今日はまた1人 中村セイゴ(per)が加わりいよいよ「バンド」として動き始めた

この4人でのサウンド(庵巳も今回からギターをエアーマイク録りからラインに変更)・・・なんだかロックバンドみたいになってきた

そして演奏途中に庵巳がこんなことを 「僕らはこれからサマソニなどのフェスティバルに出るためにがんばりたいと思う そこで売れ筋のポップな曲を書いていこうと思う・・・」・・・と

もちろんあの皮肉屋でシャレの強い庵巳のことだからこの言葉の何処までが本気かはわからないけど(笑)どちらにしてもこれからが楽しみだ

さて、今日は無事に(?)4組が糸を渡りきった それこそものすごい緊張感がずうっと切れなかった今日の演者たちと過ごした時間は・・・あっという間に通り過ぎた
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高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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