1967年、ヨーロッパでブルースのツアーが行われた 参加したブルースマンは「サン・ハウス」「ブッカ・ホワイト」「スキップ・ジェイムス」などの戦前のミシシッピブルースマンと「リトル・ウォルター」「ココ・テイラー」などの戦後のブルースマンそしてそこにまだあまりよく知られてないブルースマンがもう1人 その名は「ハウンドドッグ・テイラー Hound Dog Taylor」と言った
ボトルネック奏法で明らかに「エルモア・ジェイムス」スタイルを受け継ぐ(エルモアはすでに63年に亡くなっている)ギタリストとして注目され始めた彼だが、この当時はほとんど無名だったようだ
そのツアーのときの映像が1本残されている 2曲あってまずは彼がリードボーカルを担当してエルモア・ジェイムスの「Dust My Broom」をお得意のスライドを弾きながら歌う・・・なのだが表情が妙に硬い はっきり言って萎縮しているように見える そしてカメラもなぜかメインのテイラーではなくバックのリトル・ウォルターばかり写している
まあこの時点でもウォルターのほうがはるかに大物だったのでこういう扱いも仕方ないのかも知れないけど
その後半になると今度はココ・テイラーがボーカルを取る(この当時はまだ可愛かったのね) そこでもテイラーはバックでギターを弾いているのだが思い切り萎縮してしまっているようで、途中なぜか卑屈な笑顔を見せたりするが明らかに居心地が悪そうだ
このときの演奏について後にウォルターは「あんな下手くそな3コードしか弾けないギタリストはどうしようもない」 テイラーは「演奏は最悪!なんとかがんばって歌ったけど歌いにくかった」と述べていたそうだ
どうも当時のシカゴブルースのギタリストが徐々にミシシッピスタイルから洗練されたジャズぽいスタイルに変化していった(たとえばロバート・ロックウッド・ジュニアやルイス・マイアーズなどの)ものからはほど遠いダサくて下手っぴなギタリスト・・・そういう烙印を彼は押されてしまったようだ
そんな彼にスポットが当てられるようになるのは70年代に入ってから
「House Rockers」というドラムともう1人のギターを加えた彼のバンドがアリゲーターレコードからデビューすると一気に人気に火がついた
相変わらず下手ッピでやたら泥臭い彼のギターと歌い方に当時のロック好きな白人の若者が食いついた 一躍「ヒップスター」みたいな存在になった彼・・・こんな言葉を残している
「俺が死んだらみんなは”あいつは大した演奏は出来なかったけど気持ちよかったな”って言ってくれるだろうね」
もう1本の動画 ここでは前の動画とは打って変わって元気で嬉しそうな彼の顔が映っている 演奏もじつに伸び伸びとしてワイルドだ
ブルースも時代とともにウケるものが変わっていく それを身をもって証明してみせてくれている
高円寺ライブハウス ペンギンハウス
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