僕の八ヶ岳話 32

その工場で僕がどうしても我慢できなかったこと・・・それは「人間関係」だ

人間関係が悪くて・・・という悩みはよくあるけど・・・悪いのではない・・・無いのだ

僕が都会からやってきたよそ者・・・というので疎外される・・・そういうのはその後も何度か経験してきたが、そこではそういうものじゃないのだ そこに勤める従業員同士に僕が普通にあるはずだと思っていた交流がほとんど無いのだ 朝、社員は大体自分の車で出勤してくる パートの女性たちは会社が出す送迎用のバスでやってくる 朝の出勤時間、大勢が工場のゲートを通り職場に集まってくる 普通だったらここで「お早うございます」とか挨拶を交わすものなのだが・・・そこでは一切そういうことが無いのだ 皆黙って無表情でただ黙々と仕事場に集まってくる 前に僕が務めていた警備会社ではその真逆だった 朝出勤してきたらできるだけ大声で「お早うございます!」というのが普通だった 上司や幹部が来ればそのつど「お早うございます」「ご苦労さまです」とか言うのが常識 言わないで居ると怒られるくらいだった そういうものに慣れてきた僕とってその光景は異様だった

そしてそれは朝だけではない 昼休み、食堂で昼食をとっているときも・・・ほとんどが無言、ただ黙って飯を食い出てゆく・・・そういう職場に僕はどうしても違和感を感じずにおれなかった

皆さんは「メトロポリス」という映画をご存知だろうか? これは1927年にドイツで公開されたSF映画(まだサイレントなのだ)で、そこに描かれているのは100年後の世界(まさに今に近い) そこでは一部の富裕者層が多くの労働者たちをまるで家畜のようにこき使って人間性を一切認めない ストーリーはその労働者たちが反乱を起こしてそのリーダー格の女性が居たのだが、それをつぶすために支配者の中のマッドサイエンティストがその女性にそっくりなアンドロイドを作って反乱を抑え込もうとする内容なのだ この年代に作られたにしてはその特撮技術とかストーリーが素晴らしいのだが、ここに出てくる労働者たち・・・毎日作業場へ向かう行進をするときの彼らのまったく表情の無い顔・・・それと同じようなものがその工場にはあったのだ


高円寺ライブハウス ペンギンハウス出演するには?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする