僕の八ヶ岳話 70

清里の僕の家のあるところが標高1100m、ここでも真冬はマイナス10度以下に下がる 「ザイラーバレー」のあるところは大体標高1400m・・・だから真冬の寒さはそれどころではない

そういえばこのゴルフコースにはある注意書きを書いた看板が立っている それには
「当ゴルフコースは気圧が低いため平地よりも2割ほどボールが遠くへ飛びますのでご注意下さい」・・・と書いてある そう、空気が薄いのだ

そして地理的には八ヶ岳の山頂からここまで、途中をさえぎるものが何も無い 真冬にこの土地で言われる「八ヶ岳おろし」というものすごく冷えた空気がまともに吹き付けるのだ

真冬の最低気温は平気でマイナス20度を越える 僕がここで勤めていた間で最大で「マイナス25度」を記録したことがある これだけ冷えると色々なことが起きる

スキー場のロッジには東京など首都圏からやってくるスキーヤーたちの車がほとんどだ みなこんな高冷地には初めて来るような人ばかりなので、ここがどういう場所か知らずに来る

問題は大抵朝に起きた 宿泊客が困ったような顔をしてフロントにやってくる
「あの・・・車のエンジンがかからないのですけど」
大概の原因は僕らフロントマンにはすでに判っている その車のところへ行き、まずボンネットを開ける そしてラジエーターのキャップを外してみる するとその中に入っている「冷却液」がカチンカチンに凍っているのだ 冷却液は水と「クーラント」という液体を混合して作る カーショップやホームセンターなどで手軽に手に入るので見たあるいは使ったことのある人も多いと思う緑か赤の液体だ このボトルに使用法が書かれていて、想定最低気温に合わせて水との混合率が決まっている 普通都会で乗る車だったら想定最低気温はせいぜい「マイナス10度」ぐらいで充分だ ところがここはさっきも言ったように平気で20度を下回る 中にはもっと高めの温度で設定してたりあるいはクーラントが減った分水を足して、さらに薄めてしまうようなドライバーも多いのだ このツケは大きい 冷却液はエンジン全体に回るようになってるので、凍ってしまったらエンジンはコトリとも動かない 日中でも気温はマイナス10度くらいまでしか上がらない こうなるともう為すすべは無い 僕らはすぐに地元にある車の修理工場に電話をする しばらくすると修理工場の車がやってくる 修理工さんが車から降りてくる
「ああ、またこれね」 下手すると週に2~3回ぐらいお願いするので、彼はすっかりお馴染みになってる 彼はその車をちょっと見てそして自分の車からある機械を降ろし作業にかかる

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