言葉を紡ぐ 音を編む     10日

「ジミーさん、”むい”ってライブハウス知ってますか?」いきなり自分の話で恐縮だが今日のリハの時「たたずみ」のてりいからそう聞かれた 勿論知っている 「むい」は京都の寺町京極にあった店で今は亡き高田渡の最初の奥さん(あの高田漣の母親でもある)のお兄さんがやっていた店で70年代の前半僕はよく出させてもらってた懐かしい店だ どうやら80年代の末くらいまではやってたらしいがその後閉店したらしく、最近京都から来るミュージシャンたちに「むいって知ってる?」て聞いても誰も知らないと答えるので寂しく思ってたのだ 聞けばてりいは京都出身で若い頃何度か訪れたことがあるという それをなぜ僕に聞いたかというと、どうも高田渡について書かれた本に僕と「むい」のことが書かれてあったらしい 随分昔の話だけどね・・・懐かしい
さて、今日のライブの話に行こう ここペンギンハウスには多くのシンガーソングライターが出演している 皆なかなか素敵な曲や詩を書いてるし独自のワールドを持っている人が多い 今日はその中でもとくに言葉にこだわった出演者が多かった まず最初に登場した高橋誼 このところはギターシンセサイザーを弾きながら語りというか独り芝居のようなパフォーマンスをやっているが、今日もじっくりとそれを披露してくれた 右手には例のE-BOWが怪しく光を放つ ドラマは「お客さん・・・お一人ですか」という例のせりふで始まる 高橋誼はなかなか役者ッ気がある しかし、あのギターシンセの複雑な操作演奏をしながらよくあれができるもんだ・・・聞きながら僕はふと「あれに似てるな」と思ってた そしたら彼の終演後聞きに来てたお客さんがまったく同じことを言っていた「あれってなんだか浄瑠璃に似てますね」そうなんだ!僕もそう思った あるいは琵琶法師かな・・・

次に登場したのはアコギの弾き語りタケヤリシュンタ そうそう・・・これは本名なのだよ 彼の作り出す音楽はアコーステイックギターの音と歌う声と言葉がどれも密接に組み合わさって精密な手作り時計のような世界かも知れない ギターのひとうひとつの音にも神経を行き届かせて弾く彼の演奏にはアコギ弾きの僕としても協力を惜しまないよ 6弦のGの音が少し響きすぎる彼のギターのクセをなんとかリカバーすべく・・・色々やってみた こういうことがすごく勉強になるのだ タケヤリくんの演奏は今日もしっとりとゆっくりと染み込んでくる いい週末の時間だ

3番目は自身も詩人である大野慎矢とチエロ・バイオリン奏者の菅原雄大の登場だ 今日も酔いどれ詩人のような大野はピアノを弾きながら山村暮鳥やラングストン・ヒューズなどの詩にメロデイーをつけて歌う そこにいい感じで菅原の弦が色を着けてゆく・・・何より言葉が届いてくる

そして、最後に登場するのは最初の話に出てきたららばいてりいが組む現代詩&音楽ユニットのたたずみ 野本 黒川の二人の詩人のオリジナル詩を交互に朗読する・・・そこに狂言回しのようにてりいの歌が混ざる・・・いや、正確にはもう詩と歌の区別はここにはない 日頃てりいが言うとおり「詩は歌い唄は語って」いる この構成だけでも面白いのに毎回何か違う工夫を見せるたたずみ 今日はなんとビデオプロジェクターを持ってきた そして今日のステージの最後はそれを流しながらのパフォーマンスになった それにしても何だろうこの映像・・・最初は外国の町かなと思ったがよく見ると日本だ キリスト教のシスターのような服装をした多くの女性(男性も混ざる)たちがたいまつうを持って街を行進する・・・あとで聞いたら8月9日に長崎の浦上天主堂の周辺で行われる行事の映像なんだそうだ 8/9の浦上といえばもちろん原爆投下の日と場所だ その静かながら荘厳な光景は目にいやでも焼きつく・・・そして、たたずみのライブも僕らの心に大きな足跡を残して終わった そういえば長崎も行ったな なんか色々なことを思い出した今日だった

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