僕の吉祥寺話  51

今日の人物は「友部正人」 今でもかなり精力的に活動を続け、彼よりずうっと若いシンガーたちに絶大な影響力を持ち続けるシンガーソングライター で詩人、今のペンギンハウスに出演しているトモミュージシャンにも「友部さんが好きです」という人が結構いる

あの70年代の吉祥寺で僕はシバと同じくらい友部とも濃い付き合いをしていた
ただ、今だから開かすけど僕は正直言って当時は彼がちょっと苦手だった 詩人独特の取っつき難さが彼にはあった
本人は絶対に認めようとしなかったが彼には大きな影響を与えたボブ・ディランがそうだったように 周りの人間に対するちょっと攻撃性みたいなものがあって、その詩人らしいレトリックで彼に関わる色々な人を切り捨てていた

当時からぐゎらん堂に出演しているシンガーたちの中でもずば抜けて人気があった彼・・・天狗になってた?のかと思うと、意外なほど純朴で少年みたいな優しさもあり、とにかく複雑な男だった
うんと後になって高田渡と彼のことを話してたら渡独特の言い方で「うん、あいつはね言葉が不自由だったの」と一蹴して大笑いしたが・・・なるほど、周りが彼を勝手に偶像化して変な神話みたいなものが出来上がってて、それを嫌がる彼の煙幕だったのかも知れない

そ れに僕は友部には凄く感謝している あれはまだ僕が人前で歌い始めたばかりの頃、ある日彼が話があると言うので待ち合わせ場所のボガに行ったのだ その話と言うのが当時、彼がファッション雑誌「メンズクラブ」に連載していたエッセイに僕のオリジナルソング「切り取り線」の歌詞を紹介したいので教えて 欲しいと言うことだった
驚いた 天下の詩人、友部正人が僕の詩をそんなに評価してくれるとは意外だった
やがてその文が掲載された「港が見える丘に並んで今僕が一番好きな歌です」と書いてちんちくりんくれていた
嬉しかった! それらの文章がまとめられてある出版社から「ちんちくりん」というタイトルで出版された時、彼はわざわざ僕に連絡をくれその本を送ってくれた

ハーパーズそれから何年も経ってそのお礼も言いたかった僕は甲府のハーパーズミル(サカタギターの坂田くんがやってる店)に彼が出演すると言うので会いに行った
すごく久し振りだったが、彼は笑顔で迎えてくれた あの昔の気難しい友部とは全然違う気さくな人物になっていた

ラ イブが始まった・・・すると彼はものすごく一生懸命歌うのだ こんなに長く活動を続けてるシンともべガーなのにまるで初めて人前で歌うかのような全力な歌いかた・・・それはライブ後の打ち上げで周りからのリクエストに応じ て「ちょっと歌う」時も同じだった とにかく一生懸命なのだ
それを見ていて僕はやっと理解ができた なぜ彼が今でもこれだけ人気があるのか

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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