僕らの北沢話  6

アラビアパーティーを開く・・・それは想像力をかなり駆使したってなかなか正しいイメージを引き出すのが難しいことのように思えた
あの当時は今と違ってすぐにウェブで何でも調べられる時代ではなかった 知りたくても資料はなかなか見つからない

僕と修子バンドのベーシスト増田は当日のパーティー会場のセッティングを任されていた
さ〜て、どうしようか・・・あれこれ悩んだ末僕らは1つの結論に達した
一生懸命調べたって正しいアラビア(それも物語にあるような昔の)には近づけない
それなら僕らのイメージにある架空のアラビアを作ればいいのだと
荷造り そこでまず家にあったビニールの紐を持ち出した よく古新聞などを縛るのに使うあの薄くてヒラヒ ラしたやつだ それを部屋の中心の天井から下がっていた照明器具を中心に四方八方の壁面に張り巡らしたのだ
わかるかな、つまり大きなテントの内部のような空間を作り出したのだ これは我ながらグッジョブだったと思う

仕上げは窓に付いていた網戸にアルミホイルを切り抜いて三日月と星を張り付けた三日月
これで北沢の住宅街の空は「アラビアの砂漠」のようになった
そして畳の床には大きな布を敷いて完成!
もうそこは和室のアパートではなくなった

そしてあとは衣装だ それぞれ何となくそれっぽい衣服を見つけて、あとは適当な布を巻き付けたテントり長めの布で「ターバン」を作り、切り抜いたボール紙にアルミホイルを貼り付け「劍」が出来ればもう完璧! 気分はすっかりアラビア人だ(笑)

そして、いよいよ修子お手製の「アラビア料理」が登場するアラブの鳥
それは確か鶏肉を特別な方法で焼いたもの と、プラムを甘く煮たデザートだったと思う アラビアンナイトを熟読していた彼女の「時代考証」からできたものだからきっとかなり本場に近い料理なんだろう(すごく美味しかった!)

そしてその日集まったメンバー全員は車座に座った ビニール紐のテントと銀紙の月の下で料理絨毯を食べながら・・・至福の時間だった まるで魔法の絨毯に乗ったように心はいつの間にかアラビアンナイトの世界に居た

「飛ぶねえ〜」「うん、飛ぶ!」そんな会話を交わしながら全員にとってそれは堪らなく心地のいい時間だった

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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