仲田修子話 132

この一件でMとの関係も立ち消えになるかと思われた ところがその頃彼は別の話を修子に持ちかけてきた それは彼がプロデュースして修子とペーパーナイフのアルバムを出すということだった 話を聞いた限りでは悪くなさそうな条件だったので、とりあえず修子はそれを受け入れることにした

ところがいざレコーディングが始まるとこのMはとんでもない本性を次々に現し始めた

まず最初に修子を驚かせたこと ある日修子たちが録音のためにスタジオに行くと、仰天するようなことが待ち受けていた

修子たちには一切断りもなく無断でMが曲のオケを作ってしまっていたのだ 録音は当然ペーパーナイフのメンバーで・・・そう思っていた修子の意志とはまったく違う話だった おまけにそのオケを作るにあたって仮歌を歌ったのは当然修子ではなかった それはそれまで「ジュダス」にいて修子のマネージャーをしていた「ジャラ」だった 彼女はその時はもうすでにジュダスからも退職していて別に修子のマネージャーというわけでは無かったのだが、なぜかこのレコーディングにはマネージャーのような顔で立ち会っていた 後にわかったことだがどうやらこのジャラとMの2人は「付き合って」いたようで、まるで「女社長」のように修子たちに対する態度もかなり横柄になっていた 元々某音楽大学の「声楽科」出身だった彼女は実はその前から修子に対しての変な対抗心を持っていた そのジャラがこともあろうに修子の代わりに仮歌のボーカルをやったと知ってついに修子もここで切れた

普通仮歌というのはその歌を歌う本人がやるのが当然・・・まあ「演歌」なんかの世界では時にはあったようだが、修子の曲はすべて修子が創ったもので、その歌の強弱とかブレスポイントなど、他の人間がやれば当然全く別物になってしまう

案の定そのオケはどうしようもなくヒドいものだった

そしてここらでそのMがもうひとつ企んでいることがはっきりとしてきた それはその以前から彼が修子のメンバー有海と増田の演奏にやたらとケチをつけるようになっていたことだった 特に増田に対しての個人攻撃はひどかった

「彼のベースはノリが悪い これじゃ使い物にならない」

確かに修子も増田のベースにはちょっとそういうところがあることは感じていた しかし、それだけの理由で彼を自分のメンバーから外すなんてことは修子は微塵も思っていなかった そもそも彼が修子と一緒に活動をすることになったきっかけは、かつて彼が在籍していたユニット「S」がメジャーデビューするときに彼を追い出したことだった 同じ思いを2度もさせるなんてとんでもない

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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