仲田修子話 161

ところでこの頃に修子は、それまでずうっと吸っていた煙草をぴったりとやめた そのきっかけになったのは修子の昔からの友人の女性のある一言だった

「修子さんの声は宝物だよ」

それを聞いて修子は思った「そうか、そういうふうに期待していてくれる人をがっかりさせるわけにはいかない 自分のノドのことを大事にしなくちゃ」

それをきっかけに修子は喫煙をやめることにした それまで1日にマイルドセブンを5箱も吸っていたのだ そのやり方は「禁煙外来」にも行かず「禁煙補助剤」も一切使わず“気力”だけで・・・あるときはあまりに苦しかったので「般若心経」の写経までしたほどだ その甲斐あって見事禁煙に成功し、71歳になった現在でも美しい声を保っていることができるようになった

修子は酒もあるときを境にぴったりとやめてしまった それはわき腹にに痛みが出ることがあり、自分で「慢性すい炎」だと思ったからだった ところが、最近検査したらすい臓には何の異常も無いことが判り、すべて彼女の思いこみだったことが明かになった 最近は少しずつだが、また飲酒もするようになった修子 ただ「前みたいにたくさん呑むことはもうできなくなった」そうだ

さて、ライブの話に戻るが、最近は年に2~3回のペースでペンギンハウスライブをやっている修子だ そこには毎回必ず来るオーディエンスが多数居てくれる

そして、修子はライブを今は自分自身も楽しんでやっている

実は今まで音楽をこれだけやってきていて「楽しい」とか思ったことはほとんど無かった 家族を養うため、仲間たちの生活を安定させるため・・・最初それは仕事だった

次には自分の心の中のいつまでも消えない傷から、自力で抜け出すための苦行だった

そして、カウンセリングのおかげもあって今はすっかり救われた自分が、かつては自分の魂の救済のためにやっていた演奏活動を、今度は観に来てくれる人たちのほうに向けてやっているのだ 少しでも楽しんでもらって、日常の色々なことから一時でも開放されてもらって、ライブを聴いてくれた人たちの魂まで救うことができたらこんな嬉しいことは無い・・・そう思えるようになった

一緒にやってきてるジミー矢島もこう感じている 彼女の歌は年々どんどん良くなってきる ボーカルの音域の広さとか切れ味とかでは40代の頃には及ばないかも知れないが、今はなんともいえない暖かさと優しさと力強さが溢れている 修子が客席に向かって放つ愛を観客たちが思う存分吸い込んで、そしてまた返してくるのを喜んで受け止める そういうキャッチボールが今の修子のライブにはある 昔、あちこちのライブハウスの客席を凍りつかせた、あの頃の仲田修子は今は居ないのだ

本物のブルースマンだけが持っているものを修子も持っている だから客席は何のためらいもなく彼女にこう声を掛ける
「イエーイ!」

修子はこう言っている

「あくまでも自分自身に嘘をつかないで、決して諦めず自分の感性や美意識に忠実に生きていれば・・・いつか幸せに・・・すごい幸せになれることを私は知った」

「だから、他の人たちにもそうすることをお勧めしたい」

「自分自身を強くしっかりと持たないと幸せにはなれない 幸せというのは何もしないでボーッとしてても誰かが口に入れてくれる”おはぎ”のように外からやって来るものではない 幸せは自分の内側からやってくるものなのだ」・・・と

そして修子はあらためて、しみじみとこう言う

「私は今・・・本当に幸せだよ」                     未完

「ROSE」訳詞;仲田修子 

2002年大田区民プラザコンサートより

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