さて、「ブルース・アト・ニューポート」を聴いたことですっかりブルースという音楽に目覚めてしまった私はそこから一気にブルスばかり聴くという日常に入っていきました しかし、当時は前にも言ったように日本国内ではまだまだブルースのブームは始まっていなくて、アルバムを捜すのはなかなか大変でした
その中でやはり一番興味を惹かれたのが南部のミシシッピに伝わっていた「ミシシッピデルタ・ブルース」でした この”ミシシッピデルタ”とはミシシッピ州北西部にある「ミシシッピ河」と「ヤズー河」に挟まれた地域で、平で広大な土地は大規模な農業とくに「綿花栽培」に適していたので多くのプランテーションが存在し、そこに労働力として投入された黒人たちが数多く住んでいました
綿花農場の労働は過酷そのもので、黒人たちはものすごく安い賃金と差別を受ける中で厳しい生活を強いられていました その中から生まれてきた「デルタスタイル」のブルースは他のどの地域よりも黒人らしさが強く、また攻撃的でさえあるその表現はほかのどの地域にもない泥臭く烈しいスタイルを持っていました
現代の音楽の中でも「ブルース」と言われるものの多くのスタイルはこの土地から生まれた「デルタブルース」を基盤としています
そして「チャーリー・パットン Charly Patton」「ロバート・ジョンソン Robert Johnson「ブッカ・ホワイト BUkka White」などの優れたブルースマンを多く輩出しましたが、その中で私が最初に注目したのがこのブルースマン
「サン・ハウス Son House 」でした
彼についての説明はやはり以前に私が書いた「僕のブルースマン列伝 2」で詳しく触れてますのでこちらをご覧いただければと思います
彼の演奏でやはりどうしても目を引くのはボトルネックを使ったスライド奏法ですね
それとともに弦をバシンと叩くように、引っ掛けるように弾く独特のストラミングです 下手にまねしようと思えばまず弦を切ること間違いなし・・・ですが、こういうスタイルもちょっと何かの参考になるのではと思います ここでは「バディー・ガイ」がサポートをつけている珍しい映像です
興味深いのは戦前に彼が吹き込んだ録音ではこういう奏法をしている曲はほとんど見られません 一体どのあたりで身につけたのかは謎ですが、彼が一時現役を退いていた時期に「説教師」としてのキャリアがあることから、そのあたりのどこかで何かインスパイアされたものがあったのかも知れませんね
ところで、以前「ハウリング・ウルフ」の演奏の合間に酔っ払ってMCの邪魔をする「サン・ハウス」の模様の話をしましたがその映像が出てきました
うるさいジイさまにちょっとキレそうになりながら喋り続けるウルフ・・・彼にしてみれば大先輩なので「うるせえ、このジジイ!」とも言うわけにもいかないわけで・・・でも、演奏に入ればそこには明らかに「サン・ハウス」たちが作ってきたスタイルの影響が見られるのですね
高円寺ライブハウス ペンギンハウス