僕の八ヶ岳話 85

長芋を摩りおろしながらおやじさんはこう言った
「長芋はな、皮のすぐ下のところが一番旨みがあるんだ!剥いちまったらその美味しいところを捨てちまうことになるからな」
ある程度長芋を摩ると今度は玉子を取り出した 5~6コぐらいだろうか・・・その殻を割ると玉子と長芋を混ぜそれをそば粉に混ぜ込んだ そして「水回し」という作業にかかる
後に知るのだが、この「水回し」という作業こそが手打ちの中で一番大事で難しいところなのだった その作業だが、タライの中に手を入れかき混ぜるのだが、5つの指を使ってそば粉を掬い上げるようにして少し飛ばすようにする この時決して力を入れてはならないのだそうだが、その時の僕にはさっぱり判らなかった

「水回し」について言葉で説明するのはとても難しいのでここである動画を紹介する

ある程度水回しが進んだところで彼はちょっと固まりはじめたその小さな塊の一つを摘むと指先でぎゅっと押しつぶした その加減を見定めると今度は水を・・・それもほんんお少し加えまた作業を続ける・・・そうしてそれが今度はいい加減になったと判断すると、今度はそのばらばらになってた粉をぎゅっとまとめ一つの塊にし出した 今までぽろぽろの粉のようだったものが、たちまち粘度のような塊になってゆく

それを今度は大きな米袋のようなものに入れ床に置くと上から布を被せそれを脚で踏み出した 僕はてっきり手でこねるのだと思ってたのでちょっと驚いた するとおやじさんはこう言う
「俺も昔はな、手でこねてたんだよ! でももう年で力も無くなったからな、今はこうやってるんだ」
なるほど・・・その「足踏み」にもコツがあるようだった 生地の隅々まで均一に力がかかるように・・・足の裏でそれを感じながらやるのが肝心だということだった

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

出演するには?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする