僕が東京に来た理由 12

ペンギンハウスのPAをやるようになって僕はそれまで縁の無かった、あるいはまったく未知の音楽ジャンルと遭遇することになった。元々アコースティックでのブルースやトラディショナルミュージックあたりから入ってロックバンドでギターを弾いたりもしてたけど、それまでプログレ系とかインプロ系とはほとんど接触が無かったので、そういう音楽をやっているミュージシャンさんたちが”どういう音”を求めているのかを学ぶ必要があった。

そしてさらに未知の世界に僕を誘ってくれたのが「パンク」だった。僕が入ったばかりのペンギンハウスは毎月1度くらいのペースでパンクのイベントが開かれていた。そこはイスもテーブルも全部取り払った「オールスタンディング」のスペース・・・そこに毎回5~6組ぐらいのバンドが出演し、その目の前には50人から最大で100人くらいの観客がぎっしり立ち並びバンドが繰り出すとてつもない爆音や過激なパフォーマンスに熱狂し大声で騒ぎ踊り、酒を浴びるように呑み、時には「ダイブ」までやる・・・といつものペンギンハウスでは全く見られない光景が繰り広げられていた。終わった後の床にはこぼれた酒や吸い捨てられたたばこの吸い殻がおびただしく広がっていた。

最初のうちは僕はただ「うるさい音楽だ」としか思ってなかったが、何度もそういうイベントに付き合ってるうちにいくつか気づいたことがあった。まず、出ているバンドの演奏力だ。およそパンクには上手下手なんて無関係のように皆さんも思うかもしれないが、実際はペンギンハウスに出ていて人気の有るバンドはほとんどが皆演奏が上手かった! 中にはもう「これは現代のジャズなんじゃないか!?」とまで思わせてくれるような凄腕のバンドが居た。そして面白かったのはそういう凄腕のバンドのメンバーほど「腰が低い」という傾向があることだった。オフステージではものすごくジェントリーに「よろしくお願いしま~す」と言ってたボーカルが、ステージに上がると豹変しまるで鬼のようなパフォーマンスをして・・・終わると「お騒がせしました~!」とまたにこやかに挨拶してくるのだ。 一見突っ張って悪そうなふりをしてるけど実は芯は意外と人懐こくて優しかったりする・・・。そして彼らはその横のつながりをスゴく大事にしていることにも気づかされた。

パンクから僕が学ばされたことはものすごく多かった。

写真は「環七スピードキャッツ」

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