さて、3種類のリゾネーターギター その構造を見る前にそれぞれの「音」を聴いてもらおうかと思う アンダーラインの付いたところをクリックしてみてね
最初はナショナルのsingle cone 演奏してるのは以前にもここで紹介したギタリスト ボブ・ブロズマンだ 聴いてもらうとわかると思うけどシングルコーンは最初に「コワン!」という音が出てそのあとがあまり伸びない どちらかというとバンジョーに近い鳴り方なんだね
続いてナショナルのtri cone こちらは前者に比べて音の出方が滑らかでとくにスライドをしたときの音の伸びがいいのがわかるかな 演奏してるのは同じくボブ・ブロズマン
最後はドブロギター 弾いてるのは現在アメリカのカントリーミュージックのトップドブロプレイヤーと言われるジェリー・ダグラス もう神業のような演奏だけど前の2つとは全然音が違うでしょ なんか暖かみがあるっていうか
さあ、それではいよいよこの3台を「解剖」してみよう まず弦をすべて外しボディーの中央にあるリォネーターの「カバー」を外す あ、そうそう このカバーをリゾネーターだと思ってる人が多い 僕も最初はそうだった 実はこれはリゾネーターを破損から防ぐために付けられてるんだ 勿論音響的な役割も少しはあるんだけどね
最初はsingle cone カバーを外すとこういうものが現れる アルミ製のなんだかえらく華奢な感じのおわんみたいなもの これがリゾネーターなんだ 何かに似てない? そう、スピーカーのコーン! 構造的にはまったく一緒 素材がアルミというだけ そしてこのタイプではギターの弦の振動を伝えるブリッジの部分が「ボイスコイル」と同じ役割を持っている つまりこのギターでは弦の音をそのままダイレクトにコーンが拾って拡大するという構造なんだよね
ただ、普通のスピーカーと違うのはコーンの向きが外ではなく内側を向いているということ そこでその音をなるべくそのままなるべく大きく外へ跳ね返すために金属のボディーが必要になったと言えるんだ(実際に木製のボディーのもあるのだが) このアルミのコーンはすごく薄い まるで紙みたいにペラペラなんだ ちょっとした衝撃で凹んだり割れたりしてしまう 渦巻き状の筋はそれを少しでも防ぐために付けられてる カバーはそのために必要だったのだ
さて、今度はtri cone これは開けるとちょっとびっくりするよ あの「おにぎり型」の中は実はこうなってたんだ なんと小さなコーンが3つ そしてそれらを繋ぐように付けられている金属性のバー・・・よく見るとそのT字型になったところがブリッジになっている どうしてこういう形になったか、これは推理だけどシングルの場合コーンが直接弦からの圧力を受けるので弦の振動が吸収されてしまい音が伸びない(最初に聴いてもらったように) それを解消するために弦の圧力を分割して音が伸びるようにという工夫なんじゃないかな この場合もコーンは内側を向いている
そして低音側に2つのコーンが付いてるところを見ると低音と高音のバランスもとってたんじゃないかな 推理だけどね
そして最後のドブロ これはまた前の2つとはかなり違う 開けるとこうなってる まず目立つのが上に乗っかってる不思議なまるでガス台の「五徳」のような形をした金属性のもの これは形がそのままなんで「スパイダー」と呼ばれてるが、これがドブロを作ったドペラ兄弟の画期的発明なのだ
まず気がつくのはそれまでのコーンが内側に向いていたのと違いコーンは外を向いている 普通のスピーカーと一緒なのだ ただ、それだけでは弦の振動をどうやって拾うのかの問題がある
そこでこのスパイダーはその中心からコーンの中心に向かって一本のネジが付いている そのネジを伝わって弦の振動がコーンに伝わる そして八方に伸びた「脚」の部分は弦からコーンにかかる圧力を分散してコーンを守ると同時に振動も拾う・・・それであの独得の「ドブロサウンド」が出来上がるようなのだ それともうひとつ、ドブロのボディーはギターと同じ形をしているが実は全く違う それは「振動をしない」ということで異様に分厚い合板でできているそれはスピーカーのキャビネット(箱)とまったく同じ役割をしているのだ キャビネットに求められるのがどういうものか・・・オーディオに詳しい人なら知ってるよね
こうして一見ギターによく似たこの楽器は実は普通のギターとはかなり違う構造で音を出していた・・・ということがわかっていただけたでしょうか
そして、実は僕・・・このギターを作ったことがあるのだ その話は・・・はい明日(笑)
高円寺ライブハウス ペンギンハウス