仲田修子話 99

こういった「異種格闘技」のような仕事はその時だけではない

ほかにも当時売り出し中だった「西来路ひろみ」という演歌歌手と対バンになったこともあっ

彼女は松尾和子ほどは売れてなかったのでバンドではなく「カラオケ」のレコードかテープを持って来てそれをバックに歌っていた

そのとき修子がおどろいたのは楽屋に行くと彼女がステージ衣装を10着くらい持ってきていたことだった マネージャーなどは付いてきておらずそれはすべて彼女が自分で持ってきたものらしかった

なぜそんなに沢山の衣装が必要なのか・・・それは修子には理解できなかった


そのとき修子はその当時覚えたばかりの上田正樹の曲「あこがれの北新地(注1)」などを歌った

するとその店の「黒服(注2)」の人たちが修子にこう言った 「俺たちはあんな演歌なんかより君の歌のほうが全然好きだよ」

赤坂の店に1週間のトラで行ったときのことだ その店には修子のほかに対バンで若い男性の弾き語りシンガーが入っていた 特に上手いというほどでも無かったがまあまあ普通の腕前くらいのレベルの歌い手・・・修子は彼の歌を聴いてそう思っていた

そして次の日、修子がまたその店に行くとなぜかチェンジの時間になってもその男性シンガーが出てこないのだ 不思議に思った修子は店の人に訊ねた

「あの昨日居た彼は今日はお休みなんですか」

すると店の人はこう答えた

「ああ、彼ね 彼なら昨日あなたの歌を聴いてショックを受けて・・・国に帰ったよ」

「辞めてしまった」その事実を知って修子は唖然とした

注1;「あこがれの北新地」は上田正樹がバンドメンバーの有山淳司などと1975年に発表したアルバム「ぼちぼちいこか」に収録されていた 「北新地」とは大阪の北部(キタ)にある歓楽街で「ミナミ」に比べると上品で高額な店が多く東京でいえば銀座みたいな地帯

ちなみに余談だが、当時このアルバムが出て有山のギターを聴いた僕の音楽仲間が「関西に矢島くんにそっくりなギターを弾くやつが居る」と教えてくれたことがあった

注2;「黒服」高級クラブなど主に水商売のお店で働くウェイターなどの男性を指す 基本的な仕事は開店前のお掃除や準備、営業中のウェイター業務、閉店時の片づけ作業等。

高円寺ライブハウス ペンギンハウス

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